学校法人武庫川学院
「兼業承認業務」を起点に40種類以上の業務をデジタル化
目次
「兼業承認業務」を起点に40種類以上の業務をデジタル化
全学のDX推進のプラットフォームとして楽々WorkflowIIを活用
兵庫県西宮市に所在し、女子大学などを設置する学校法人武庫川学院(以下、武庫川学院)は、業務改善プロジェクトの一環として楽々WorkflowIIを導入。従来、業務効率低下の要因となっていた「兼業承認業務」をデジタル化し、業務プロセスを改善した。さらに、コロナ禍を機に、武庫川学院は楽々WorkflowIIを全学へ展開。DXを推進するプラットフォームとして活用し、40種類以上の紙の申請書をデジタル化した。その結果、申請業務の効率化や各種管理業務の負担軽減など、さまざまな導入効果が表れている。
教員・職員双方の負担となっていた「兼業承認業務」
学生数1万人以上、卒業生20万人超と、国内で最大規模を誇る女子大学「武庫川女子大学」。その運営を担うのが武庫川学院だ。同学院は1939(昭和14)年、創設者である公江喜市郎氏が「高い知性」「善美な情操」「高雅な徳性」を立学の精神に掲げ創立。その後、女子大学、女子短期大学、附属中学校・高等学校などを開校し、2024年には創立85周年を迎えた。武庫川学院は2039年の創立100周年に向け「MUKOJO ACTION」を策定。「一生を描ききる女性力を。」をコンセプトに、教育、研究、社会貢献、運営などの幅広い領域の強化・深化に取り組んでいる。
そうしたなかで、加速しているのがDXだ。武庫川学院は2016年に業務のデジタル化を目的とした「業務改善プロジェクト」を発足。この取り組みにおいて、従来、業務効率低下の要因の一つであった「兼業承認業務」のデジタル化に着手した。兼業承認業務の問題点について、人事部人事課 畑涼子氏は振り返る。
「兼業承認業務とは、当学の教員が外部機関の委員を委嘱されたり、講演の依頼をされたりした際に、兼業の承認を受けるため実施するものです。以前は、教員がこの申請のために3枚複写の申請書を手書きで作成していたのですが、けっこうな手間がかかり負担となっていました。教員は講演や研究の依頼を受けるたびに承認を受けなければならず、年間の申請書の枚数は全校で1,000枚にものぼります。すべて手書きで作成するのですから手間は膨大です。さらに、記載された申請書は事務職員が回収して確認や回付を行うのですが、この作業にもまた手間がかかります。当学では教員が1週間のうちに兼業に割ける時間を内規で定めているため、事務職員は申請書の内容や兼業の累積時間を細かく確認して管理する必要がありましたし、回付にも少なくない時間を要します。特に、夏季休業の期間中などは承認者や職員が学内に不在のことも多く、承認までにかなりの時間がかかりました」(畑氏)。
以前、武庫川学院では兼業承認業務の決裁までに、申請書の作成から、回収・確認、回付を含めると1~2週間がかかることも珍しくなかった。こうした非効率を解消するため、同学院はワークフローシステムの導入を決める。
大規模大学での導入実績を評価。
楽々WorkflowIIで業務のデジタル化を推進
ワークフローシステムの導入にあたって、武庫川学院は3社の製品を比較検討した。コストパフォーマンスや他大学への導入実績、システムの自由度や発展性など、複数の項目で製品を評価。その結果、選定されたのが楽々WorkflowIIだった。決め手の一つになったのが某大学での導入実績。比較検討にあたって、担当者は他大学の訪問調査を実施したが、武庫川学院と同程度の規模の大学でも楽々WorkflowIIは安定的に運用されており、それが製品への信頼につながった。さらに、システムの発展性も高い評価を集めた。当初、武庫川学院は兼業承認業務にスコープを限定していたが、長期的には他の業務への適用やシステム連携も視野に入れていた。その点、楽々WorkflowIIは汎用的なワークフロー基盤であり、CSVやWebAPIを通じた他システムとの連携も可能なことから、システムの展開にも期待ができた。
こうして、武庫川学院は楽々WorkflowIIの導入を決定。情報システム部門を中心にシステムの構築と申請書の電子化を進めていく。現在、楽々WorkflowIIの運用を担当する総合情報システム部情報システム課 大西美希氏は、導入のポイントを「紙の申請書をそのまま電子化しないことが大切でした」と話す。
「例えば、兼業承認の申請書には申請者の兼業時間を自動計算する仕組みを施し、累積時間が規程を超えるようであればアラートを表示しています。以前、こうした作業は事務職員が目視で確認して差し戻していましたが、楽々WorkflowIIの機能を活用して自動化しました。紙の申請書をシステム上で再現するだけでも効率化になりますが、より効率化を推し進めるならば、各種機能を積極的に活用し、ユーザの負担を軽減できるような工夫をする必要があります」(大西氏)。
1~2週間の承認期間を数日間に短縮。
40種類以上の業務のデジタル化も達成
2018年、武庫川学院は楽々WorkflowIIにより、兼業承認業務のデジタル化を実現し、年間1,000件ほど発生していた兼業承認業務は、決裁までのプロセスが大幅に効率化された。具体的には、従来、1~2週間を要していた承認までの期間はわずか数日に短縮したほか、申請書の確認などにかかる手間も大幅に削減できた。以前、兼業承認業務を所管する人事課では、教員の兼業状況を把握するためExcelの管理表を作成していたが、この管理表も現在では不要になっている。
さらに、武庫川学院はコロナ禍をきっかけに楽々WorkflowIIの活用を拡大。感染拡大防止策のためリモートワーク体制への移行を迫られたことから、兼業承認以外の業務もデジタル化を進めることにし、その手段として、楽々WorkflowIIが活用された。当初は兼業承認業務を所管する人事課に限定していたシステムを、給与課、教務課、総務課、情報システム課など、複数の部署に横展開し、最終的に41種類の業務をデジタル化することに成功した。
その一例が通勤届の申請だ。楽々WorkflowII導入後の変化について、人事部給与課の長岡伸英氏と丹羽千草氏は説明する。
「当学では通勤届の書式が専任・嘱託職員と非常勤職員とで異なります。そのため、以前は誤った書式で申請書を作成して届け出る教員や職員が多かったのですが、現在では楽々WorkflowIIのキャビネットで書式を一覧で確認して選択できるため、申請書の届出ミスや差し戻しはほぼなくなり業務が効率化されています」(長岡氏)。
「当学はキャンパスを複数設けているため、人事異動で勤務先のキャンパスが変更になると、そのたびに通勤経路が変わり、通勤届の届出が必要になります。例年、年度が変わる前の3月には届出が集中するのですが、楽々WorkflowIIが導入されて以降は処理業務がかなり軽減され、業務の負担も減っています」(丹羽氏)。
こうして武庫川学院はリモートワーク体制を構築し、人事課をはじめとする複数の部署の業務効率化を達成。DXの実現に向けて、その土台となる環境を築くことができた。
運用ノウハウをさらに蓄積し、市民開発を実現したい
今後、武庫川学院は楽々WorkflowIIをより広く展開し、業務のデジタル化をさらに進めていく方針だ。総合情報システム部部長の東條弘氏は、楽々WorkflowII活用の展望を語る。
「人事課や情報システム課など、まだ紙の申請書がいくつか残存しているため、デジタル化可能なものについてはすべて楽々WorkflowIIに移行していくつもりです。さらに、長期的にはシステムの市民開発にも挑戦したいと思っています。各部署の担当者が楽々WorkflowIIを活用して業務のデジタル化を進められれば、学内のDXはますます加速していくはずです。そうした体制を実現するためにも、今後は楽々WorkflowIIの運用ノウハウを蓄積し、担当者の育成を少しずつ進めてきたいと思っています」(東條氏)。
ある一つの課題解決を目的に楽々WorkflowIIを導入し、それを足がかりに全学レベルで業務をデジタル化した武庫川学院。その取り組みは、学生数1万人を誇る大規模な教育機関のDX実践事例として注目に値するだろう。社会全体でDXが加速する昨今、教育機関にもその波は押し寄せている。いかにしてアナログな業務環境を刷新するのか。その課題に直面する企業・団体に、本事例は重要な示唆を与えてくれるに違いない。
総合情報システム部 情報システム課 大西 美希 氏
人事部 人事課 畑 涼子 氏
人事部 給与課 長岡 伸英 氏、丹羽 千草 氏