株式会社アシスト
業務プロセス改善によるDXを実現
目次
90日間の「紙レスプロジェクト」で残存する紙の申請書をすべて電子化
リモートワークへの迅速な移行に加え、業務プロセス改善によるDXを実現
全国に9拠点を有するパッケージ・ソフトウェアの専門商社・株式会社アシスト(以下、アシスト)は、楽々WorkflowIIを導入し、ワークフローシステム「たのも」を構築。ビジネス部門の全部署による共同プロジェクトを通じて、システムの構築・浸透を推進し、社内のバックオフィス業務に関わる紙の申請書をすべて紙レス(ペーパーレス)化した。プロジェクトでは各ビジネス部門の部署担当者とIT部門が一体となり、業務プロセスを改善。申請書の電子化の手順を標準化し、全社にシステムを浸透させた。これにより、リモートワークの導入や業務改善による生産性向上、内部統制の強化、個人情報流出のリスク低減など、数々の効果を得ている。
曖昧なルールによる、承認申請業務の運用が
業務生産性の低下や内部統制上の課題を生んでいた
パッケージ・ソフトウェアの専門商社として、1972年の設立以来、20,000社を超える企業のIT課題解決に貢献してきたアシスト。社員数は2021年度時点で1,210名(グループ会社を含む)。東京都千代田区の本社を中心に、北は札幌から南は沖縄までの各地に9拠点を展開し、広範な組織網を築いている。
アシストは、2018年に楽々WorkflowIIを導入し、二度のプロジェクトを通じて、ワークフローシステム「たのも」を構築した。楽々WorkflowIIに対する「たのも」という社内愛称は、承認を「頼もう」という意味から命名したそうだ。
現在、「たのも」はグループ会社を含む全社員が利用しており、総申請書数は66本、平均月間申請数は約2,000件と、同社のバックオフィス業務を運営するうえで必要不可欠なシステムになっている。あらゆる企業にDXが求められる社会情勢のなかで、時代の要請にいち早く応じ、楽々WorkflowIIによるワークスタイルの変革を実現した形だ。
「たのも」の構築に至る背景には、同社における「承認申請業務の曖昧な運用」があったと、経営企画本部経営管理部の白水氏は語る。
「以前、アシストの承認申請業務の多くは、紙の申請書やメールで運用されていました。しかし、これらは明確な社内規程のもと行われていたわけではなく、各部署の習慣や社員の経験則といった、曖昧なルールのもとで運用されていたため、いくつかの課題を生んでいました。その一つが、業務生産性の低下です。承認経路が曖昧なため、社員は誰の承認を受けていいのか分からず、紙の申請書を持って社内を歩き回ることは日常茶飯事でした。
また、曖昧な承認経路は、内部統制上の課題でもありました。メールによる承認申請業務では、承認者が不明確なことから、CCに承認者に該当しそうなすべての上長を入れてメールを送信するといった運用が常態化しており、権限のない上長も申請書を閲覧できる状況でした。これは内部統制におけるリスクでもあり、早急に是正する必要がありました」(白水氏)。
また、白水氏は、紙の申請書が個人情報流出のリスクにもなっていたと話す。例えば、アシストでは、申請書が紙であったことから、人事系の機微な個人情報を含む申請書も、全国の拠点から社内便で回収せざるを得なかった。社内便には誤配送や紛失の危険が伴う。また、仮に申請書が本社に回収されたとしても、処理業務中に紛失するおそれもある。個人情報流出という重大なリスクを排除するためにも、同社ではワークフローシステムの導入が強く求められていた。
「権限管理の柔軟性」を評価し、楽々WorkflowIIを導入
承認に関する社内規程を作成し、承認経路を明確化
アシストは2018年春頃から、ワークフローシステム導入に向けた取り組みを開始する。まず、社内の承認申請業務にまつわる課題を調査し、55項目の選定要件を抽出。楽々WorkflowIIを含む4製品のベンダーに選定要件を提示して、製品説明を受けた。その後、複数部門のメンバーで4製品を55項目の選定要件に沿って評価しつつ、システムの比較検討を進めた。
楽々WorkflowIIが選定された決め手について、経営企画本部ITサービス企画部 上原氏は「権限管理の柔軟性」を挙げる。
「楽々WorkflowIIでは、個人単位や部署単位など、様々な単位で細かく権限を設定できます。たとえシステム管理者であっても許可された担当者以外は申請書を閲覧できないといった点が、内部統制強化の面からも重要な目的であったため、他社製品よりも優れた権限管理機能を持つ、楽々WorkflowIIが選定されることになりました」(上原氏)。
2018年6月、アシストは、上原氏を含むITサービス企画部のメンバー2名、そのほか社内で経理、総務、法務を担当するメンバーを1名ずつ招聘し、「たのも」構築に向けたプロジェクトチームを結成する。プロジェクトチームは、システムを一挙に全社展開すれば、各所に混乱が生じると判断し、証跡管理の必要性が高いコーポレート部門の申請書から電子化する方針を採った。小さな業務改善を積み重ねるなかで、徐々に全社に取り組みを浸透させていくのが狙いだった。
この導入プロジェクトで最も工夫が凝らされたのは、承認経路に関するルール作りだ。現在の実務運用を尊重しつつも内部統制を機能させられる承認申請に関する社内規程を策定し、曖昧だった承認経路を明確化する必要があった。この業務を担当した経営企画本部総務法務課の豊冨氏は、最も重視した点を「用語の定義」だと述べる。
「社内規程を策定するなかで、従来のアシストでは『申請』や『依頼』や『回覧』といった用語が漠然と用いられていることに気が付きました。しかし、それらはそれぞれに目的や効果が異なるため、正しく定義して使用しなければ、承認申請業務を自然と混乱させてしまいます。社内規程を策定するうえでは、こうした用語の定義に細心の注意を払いました」(豊冨氏)。
各種申請画面
こうした取り組みを経て、プロジェクト開始から約半年後の2018年11月半ばに、「たのも」はリリースに至る。リリース当時は、申請書数5本と適用範囲は狭く、承認経路が比較的シンプルで、業務整理が容易な申請から運用が開始されている。しかし、この後、アシストはあるきっかけから、「たのも」の適用範囲を広げていく。
独自ツールを活用し、紙の申請書の電子化を加速
作成ペースを約5倍に引き上げ、「紙レスプロジェクト」を成功に導く
2018年11月のリリースから、アシストは約1年の期間をかけて、申請書の総数を20本ほどに増加させたが、その時点でも申請書の電子化には1本あたり2週間ほどの期間を要しており、紙の申請書やメールによる承認申請業務は数多く残存していた。しかし、その状況はコロナ禍により大きく変化した。
コロナ禍により、リモートワークへの移行が不可避となったアシストは、各部署が業務改善の企画を提案し、90日間で遂行するというプロジェクトを始動する。ここで同社の経営企画本部は、「たのも」で社内の紙の申請書をすべて電子化する、「紙レスプロジェクト」を提案する。これにより、白水氏、豊冨氏、上原氏を含む、新たなプロジェクトチームが結成され、「たのも」の適用範囲拡大が強力に推進されることとなった。紙レスプロジェクトの体制について、白水氏は説明する。
「紙レスプロジェクトでは、ビジネス部門の各部署から担当者を選出し、プロジェクトの推進役としました。各担当者が自らの部署内の承認申請業務を整理し、電子化に向けた要件定義を行うためです。90日間という短期間でのプロジェクト遂行を実現するためには、プロジェクトチームだけでなく、ビジネス部門一丸で取り組みを進めていく必要がありました」(白水氏)。
紙レスプロジェクトのWBS
紙レスプロジェクトは2020年6月〜9月の3ヶ月間で実施。
社内に残存している紙の申請書をすべて電子化することが目標にされた。
紙レスプロジェクトでは、プロジェクトチームが作成した「業務シート」というツールが大きな効果を発揮した。業務シートは、各承認申請業務の目的や、承認の判断基準、承認経路、閲覧権限などをまとめるためのツールだ。各部署の担当者は、業務シートを用いて、自らの部署内の承認申請業務を整理し、さらにプロジェクトチームのメンバーとともに内容を検討し、それらが先に作成した社内規程に則った運用になっているかを確認することで、適切な形に設計していった。
また、申請書を作成する際には、業務シートの内容を反映するだけでよいため、電子化にかかる工数は大幅に削減された。上原氏によれば、申請者情報等の共通項を初期フォームとしてテンプレート化する等の開発標準化を行うことで、1本あたりの開発工数がそれまでの5分の1程度に圧縮され、早いものでは1本の申請書を1日で電子化できるようになった(「※業務シート」参照)。
業務シート
各承認申請業務の目的や承認経路などを一覧化でき、申請書の電子化における要件定義を行うことができる。
紙レスプロジェクトは急速に進められ、3ヶ月間で46本の申請書を電子化。目標であった「すべての紙の申請書の電子化」を見事に達成し、プロジェクトは成功裏に終わる。小規模にスタートした業務改善の取り組みは、こうして社内全域に拡大することとなった。
現在、アシストでは、「たのも」により、総申請書数66種類、平均月間申請数約2,000件もの承認申請業務の効率的かつ適正な運用が行われている。紙の申請書の廃止により業務生産性の向上が進んでいるほか、承認経路の明確化と適切な証跡管理により、内部統制の強化も実現している。
例えば、経理に関する承認申請業務については、「たのも」に証跡が一元管理されることで、直近の会計監査において、スムーズな監査に寄与する結果となった。また、機微な個人情報を含む承認申請業務についても、「たのも」により承認経路と権限を管理し、個人情報流出のリスクを大幅に低減している。
今後は自社提供システムとの連携を通じて、新たなソリューション開発を目指す
上原氏は、「たのも」の今後の活用展望として「自社が提供する製品やサービスとの連携」を挙げる。将来的には他システムとの連携を通じて、独自の活用事例を確立し、自社のソリューションとするのが狙いだ。
「アシストでは、Oracleを始めとした各種データベース、BIツールのWebFOCUSやQlik、EAIツールのDataSpiderなど、ワークフローシステムで蓄積されたデータを有効活用するうえで役立つ製品やサービスを多数取り扱っています。そうした製品やサービスとの連携を実現できれば、自社の運用体制をソリューションとしてお客様に提示することで、新たな価値をお届けできるのではないかと思案しています」(上原氏)。
楽々WorkflowIIで「たのも」を構築し、全社的なプロジェクト体制で社内のバックオフィス系業務に関する承認申請業務を一挙に適正化したアシスト。その取り組みから得られた知見は、今後の活用においても大きな武器になるに違いない。
株式会社アシストのホームページ ※本事例中に記載の社名や肩書き、数値、固有名詞等は取材時点の情報です。DXについては下記をご覧ください。