株式会社ニチリン
拡大中の海外拠点にもシステムを展開
目次
- 保守期限切れの迫るワークフローシステムを、楽々WorkflowIIでリプレイスSAP S/4HANAとのデータ連携も実現し、拡大中の海外拠点にもシステムを展開
- スクラッチ開発の文化を転換し、パッケージ製品の導入を検討「ローコード」と「自由度の高さ」を評価し、楽々WorkflowIIを選定
- 標準機能を効果的に活用し、自社に適したマスタや入力フォーマットを作成SAP S/4HANAとの自動的なデータ連携も実現
- 北米、アジアを中心に海外拠点にも展開を続け、システムの標準化を推進導入を通じて得られたナレッジも自社のアセットとして活用
- 楽々WorkflowIIの活用ポイントは「定期的なバージョンアップ」各種サポートなどを利用し、今後もシステムの成熟を図る
保守期限切れの迫るワークフローシステムを、
楽々WorkflowIIでリプレイス
SAP S/4HANAとのデータ連携も実現し、
拡大中の海外拠点にもシステムを展開
二輪・自動車用及び住宅関連用の高機能ホースを製造・販売する「株式会社ニチリン」(以下、ニチリン)では、住友電工情報システムの「楽々WorkflowII」を導入し、保守期限が迫っていた旧ワークフローシステムを自社開発でリプレイス。従来、属人化されていたシステムの開発・保守業務を標準化したほか、ERPへの自動的なデータ連携や、海外拠点へのシステム展開も実現している。
スクラッチ開発の文化を転換し、パッケージ製品の導入を検討
「ローコード」と「自由度の高さ」を評価し、楽々WorkflowIIを選定
兵庫県姫路市を主要拠点とし、二輪・自動車用及び住宅関連用の高機能ホースを製造・販売しているニチリン。創業は1914年と、100年以上の歴史を有し、二輪車用ホースの市場においては国内シェア98%を占める圧倒的な地位を確立している。また、海外にも事業の裾野を広げており、アジア、欧州、北米などの地域に14拠点を展開。2020年12月に発表した中期経営計画では、「グローバルでの競争力アップ」を重点施策に掲げ、海外事業のさらなる加速に取り組んでいる。
ニチリンは2014年8月から楽々WorkflowIIを導入。年間数回のバージョンアップを重ねながら、自社の環境に適したワークフローシステムを築き上げた。
導入の発端は、旧ワークフローシステムの保守期限切れだった。以前、ニチリンでは、生産設備系や事務系などの区分に関わらず、システムは全てスクラッチでの自社開発を行っていた。旧ワークフローシステムも2000年ごろに自社開発して以来、稼働を続けていたが、ハード、ソフト(※エンジン利用のソフトウェア)共に保守期限切れを迎えたことをきっかけに、パッケージ製品へのリプレイスを検討するようになった。スクラッチ開発からパッケージ開発に移行した理由について、同社の情報システム部情報システム課の滑川勇臣氏は次のように振り返る。
「スクラッチ開発による弊害は、当時の大きな課題でした。以前は、開発に時間を要することが多かったですし、開発や保守における属人化も起こっていました。そこで、ローコード開発できる自由度の高いパッケージ製品を導入し、開発期間の短縮や業務の標準化を目指しました」
また、情報システム部は、海外を含む子会社のシステム業務も担当していることから、パッケージ選定の際には、「多言語対応であること」「同一インスタンスを子会社でも利用できること」という要件も設けた。その結果、選定されたのが楽々WorkflowIIだ。
同部は、楽々WorkflowIIの導入に向けたプロジェクトチームを立上げ、開発に乗り出す。チームの人員は4名。滑川氏は要件定義からJavaScript開発、ユーザー教育までを担当するシステム管理者を担い、それ以外に、特定の文書を作成するフォルダ管理者や、アドオンのJava開発を担当するメンバーがアサインされた。開発の過程について、滑川氏は「それまで弊社ではJavaやJavaScriptを使う機会が少なかったため、開発には多少の苦労がありました」と話す。プロジェクト発足の2014年4月から数ヶ月後の2014年8月に楽々WorkflowIIのインストールが完了、その後、試験運用、2015年1月の決裁申請系の移行完了など段階的な移行を行い、2020年5月に基幹システム連携系の移行をもって、旧ワークフローシステムのリプレイスが完了した。
標準機能を効果的に活用し、
自社に適したマスタや入力フォーマットを作成
SAP S/4HANAとの自動的なデータ連携も実現
2020年11月現在、ニチリンでの楽々WorkflowIIのユーザー数は約600名。決裁申請系、経費精算系、さらに同社が利用しているERP「SAP S/4HANA」(以下、S/4)とのデータ連携系など、約250種類のフォルダが運用されている。
開発時に「原則、標準機能のみでノンプログラミング開発をする」というポリシーを掲げたこともあり、システムでは数多くの標準機能が駆使されているという。
「例えば、経費精算で入力されたデータは、マスタ管理機能を用いて、『消費税』、『費用計上部署』、『勘定科目』といった項目ごとにマスタ化しています。また、経費精算のエラーチェックにも、標準機能のチェックロジックを用いており、部署と勘定科目の適合性や、補助科目の要否などを判定しています。そのほか、Excelテンプレートによるフォーマット作成機能も利用しています。弊社では、経費精算の証憑を添付する台紙をExcelテンプレートで作成しており、出力された帳票を経理部門がOCRで読み取っています。その際、OCRの精度向上を図るため、帳票のレイアウトや文字を微調整しているのですが、Excelテンプレートは微調整が施しやすく、大変重宝しています」(滑川氏)。
さらに、ニチリンでは、楽々WorkflowIIのデータを自動出力し、S/4にインポートする仕組みを構築している。このデータ連携の方法について滑川氏は「まず、ユーザーがExcelフォーマットにデータを入力し、上長への申請を行います。上長が承認すると、データは標準機能の『文書データ書式指定CSV出力』により自動的に所定のディレクトリに出力され、その後、自社開発のアプリによってS/4用のデータフォーマットに変換されます。最後に、変換されたデータがS/4のインポート機能で取り込まれ、連携が完了します」と解説する。
この仕組みにより、S/4の標準データである品目マスタや受注データのほか、顧客・社内品目の変換マスタなど、アドオンテーブル上のデータも自動的に連携されている。
その一方で、データを入力するExcelフォーマットには、S/4上の値を参照するなどのエラーチェックを施していないため、ユーザーの入力ミスがしばしば発生しているという。S/4へのインポート時に入力内容のエラーが発覚することもあり、今後はそうした課題の改善に取り組むつもりだ。
北米、アジアを中心に海外拠点にも展開を続け、
システムの標準化を推進
導入を通じて得られたナレッジも自社のアセットとして活用
ニチリンでは、当初の目的だった情報システム部の業務標準化のほかにも、楽々WorkflowIIによる導入効果が生まれている。
その一つが、海外拠点とのシステムの標準化だ。同社では、北米のアメリカ・テネシー州の生産拠点と、カナダの営業拠点の2カ所をパイロット拠点と定め、システムの展開をスタート。現在では、決裁申請や販売・購買単価申請などの6つのフォルダを運用している。また、最近では、アメリカの2つの州とベトナムの生産拠点に展開が完了し、新たにインドネシア、タイ、中国、インド、スペイン、メキシコへの展開を計画するなど、グローバル規模でのシステムの標準化が推進されている。
さらに、滑川氏は「楽々WorkflowIIの導入は、私自身のスキル向上にもつながりました」と語る。導入前、滑川氏はプログラミングの専門的な知見を有していなかったが、楽々WorkflowIIを通じて、HTML, CSS, JavaScript, Java, SQLなどのプログラミング言語、さらにサーバーやネットワーク環境、統合開発環境など、幅広い領域に触れることとなった。そうした経験から得られた「教育効果」は、自社のアセットにもなっている。
滑川氏は「技術面だけでなく、プロジェクトマネジメントやマニュアル作成などの業務面でのスキルも、導入を通じて高めることができました。自社の情報システム部門にナレッジやスキルを蓄積するうえでも、楽々WorkflowIIは有効だと感じています」と話す。
楽々WorkflowIIの活用ポイントは「定期的なバージョンアップ」
各種サポートなどを利用し、今後もシステムの成熟を図る
約6年間に渡る、楽々WorkflowIIの開発・保守経験を振り返って、滑川氏は「定期的なバージョンアップが重要」だと指摘する。ニチリンでは、2014年8月のシステム稼働以来、2020年までに12回のバージョンアップを行っている。楽々WorkflowIIは年数回のペースで新バージョンがリリースされるため、追加機能などを効果的に利用するにはバージョンアップが欠かせないのだという。
「常に最新版に更新する必要はありませんが、少なくとも年1回はバージョンアップするのがお薦めです。従来はアドオン開発が必要だった機能が、後に標準機能として追加されることも多いので、バージョンアップのタイミングは、新バージョンの内容を吟味してから決めるのが良いと思います」(滑川氏)。
現在、ニチリンでは年1回ほどのペースでバージョンアップを実施。海外拠点などの子会社への展開も進め、今後もさらにシステムを成熟させていく予定だ。最後に、滑川氏はバージョンアップをスムーズに実施するうえで、「開発・検証ライセンス」とサポートサービスの「技術サポート」が役立ったと語り、現在、楽々WorkflowIIの導入を検討している企業に向けて次のようにアドバイスする。
「導入当初は、基本ライセンスのみで十分だと感じていましたが、バージョンアップのテストや、システム全体のパラメータ変更のテストには、専用の開発・検証環境が必要になります。そのためにも開発・検証ライセンスは欠かせません。また、技術サポートも、バージョンアップによる追加機能の使い方や、周辺システムについて知るために非常に役立ちます。弊社では、導入から6年経過した現在も頻繁に利用しており、長期間に渡って重宝するサービスだと思うので、これから楽々WorkflowIIを導入する方にも加入をお薦めします」(滑川氏)。
情報システム課
滑川 勇臣 氏 ※本事例中に記載の社名や肩書き、数値、固有名詞等は取材時点の情報です。