富士エレクトロニクス株式会社
ERPの業務データ更新を起点にワークフロー自動開始
目次
富士エレクトロニクス株式会社
J-SOX対応のためERPの全承認業務を楽々WorkflowIIで実現。
ビジネススタイルを根本的に変えたワークフローシステム。
富士エレクトロニクス株式会社は、グローバルネットワークを活用して世界中から最先端の半導体、電子部品、電子機器を調達し、大手メーカーなど約1300社のユーザ企業に供給しているエレクトロニクス専門商社である。業務の標準化を狙って2009年より新たに稼動した基幹業務システムでは、ERPパッケージにワークフローシステム楽々WorkflowIIを連携させ、一体運用する方式を採用。仕事の進め方が大きく変わり、正確でスピード感のある業務の流れを各社員が実感している。
J-SOX対応をきっかけとした業務標準化への取り組み
富士エレクトロニクスの強みは、商社機能にメーカー機能もプラスした、高度な技術力と経験にある。営業と技術が一体となって、ユーザの製品開発に設計段階から協力する「デザイン・イン活動」を実践し、トータル・サポート体制でユーザの信頼を獲得することにより、業績を大きく伸ばしてきた。
一方で、企業規模の拡大に伴い業務が複雑化していたことは否めず、業務の見直しが必要な状況にあった。そこで2009年のJ-SOX法施行への対応検討を機に、さらなる成長のための企業体質作りに向けて、業務の標準化を行うとの方針を決定し、2007年に業務推進室を新設し、業務プロセス改革、IT戦略機能強化に着手した。
その中心的な取り組みとして、導入後10年を経過していた基幹システムを刷新してERPパッケージを導入することにより、業務改革とIT強化を短期間で実現することとした。そしてERPの選定を進めた結果、業務標準化という観点、および導入コスト面で、自社に最もフィットしているとの判断から、JD Edwardsの導入を決定した。ただし、詳細な製品調査の段階で、JD Edwards標準の承認機能では、J-SOX法の監査が求めるレベルには対応できないことが判明しており、各業務の承認機能をどのようにして強化するかが業務改革の課題として残っていた。
ワークフローとの連携でERPをカバー
内部統制として有効なレベルの承認機能をどのように実現するか。業務推進室の中のIT専門チームであるIT戦略グループでは、ERPの改造は最小限に抑え、新たにワークフローシステムを導入してERPと連携させる方式が最適と判断した。そこで、Web上の情報サイトやセミナー参加などで各社ワークフロー製品の情報収集を開始した。ワークフロー製品の数は多いが、ERPを極力修正せずにスムーズに連携できるものとなると数は限られ、机上での検討の結果、2製品にまで絞り込んだ。
それらの製品を提供する2社に細かな製品紹介やデモを求め、詳細に比較検討した結果、住友電工情報システムの楽々WorkflowII(以下、楽々WF)を採用することに決定した。IT戦略グループの担当者は「決め手となったのは融通性ですね。楽々WFは、画面表示の設定、複雑な経路の設定、文書フォルダの作り方など、すべての面で細かな設定が簡単にできるようになっていましたし、ERPとの連携についてもデータの受け渡しだけのシンプルな方式で実現できることがわかりました。」と話す。
ERPを使わずにERPを動かすという斬新なシステム
ERPによる基幹システム再構築と並行して導入が進められているプロジェクトがあった。IPフォン、メール、テレビ会議、Web会議などの様々なコミュニケーションを統合するユニファイドコミュニケーションの導入だ。同社の社員の8割が営業であり、トータル・サポート体制を実践するため、外出や出張が多い。ユニファイドコミュニケーションは、ネットワークさえあればどこでもオフィスと同じ環境を実現するとともに、オフィスフロア効率利用のためのフリーロケーションも可能とし、フレキシブルで効率的な業務運営が可能となった。
このようなインフラの整備により、ERPを中心とした新しい基幹システムは一段と威力を発揮することとなる。「外出先からでも仕事ができる環境を提供する。ただし社外からERPを直接操作させることはしたくない。それが楽々WFでは実現できました。」と担当者は話す。例えば、内勤のアシスタントがERP画面基幹業務データを登録し、営業担当者やその上司、部門長などは楽々WFの画面での承認・否認だけで業務ができるようになった。つまりERPを使わずにERPを動かせるようになったのだ。
ERP から受信した業務データに対してファイル添付、コメント追記ができる。「Jupiter」は、この承認システムの愛称だ。
きわめてシンプルなシステム構造
ERPと楽々WFとの連携構造はきわめてシンプルだ。ERP側で業務データの更新(登録・変更・削除)が行われると、連携エリアに送信用データが書き込まれる。ここでERPと連携エリアはいずれもIBM製のSystem i5上にある。一方、Windowsサーバ上の楽々WFは5分ごとに連携エリアに受信すべきデータがあるかチェックし、あれば楽々WF側に受信してワークフローを自動開始する。ワークフローが完了すると、逆に連携エリアに通知を書き込み、ERP側の受信処理がそれを感知して承認完了を記録する。
楽々WFでの処理は、受信した業務データに対する承認を行うこと、必要に応じて見積書などのファイルを添付したり、承認時コメントを記入することであり、いずれも楽々WFの標準機能で実装可能だ。「データ項目を決める、承認経路を決める、画面の見栄えをよくする。開発作業はこの程度でした。当初、経路設定に手間がかかりましたが、楽々WFのバージョンアップで経路の一括インポートができるようになり、格段に楽になりました。」と担当者は話す。
ERP、楽々WFとも、5分おきに定期受信処理が自動起動し、連携エリアにデータがあれば受信して後続の処理に渡す。
HTMLの知識で先行開発できた承認システムで手応え
実はERPとの連携による基幹システムが稼動する前に、担当者は楽々WFを使っていくつかの承認システムを先行して開発し、稼動させている。このうち、出張申請・出張報告では、遠方への出張の際に事前申請と事後報告の2回承認を得るという社内ルールをワークフロー上でどう実現するかという課題があったが、事前申請が部門長に承認されたあとで経路を申請者自身に戻し、事後報告時点で申請を継続するという経路を設定することで解決させた。また、ユーザ企業の需要動向をみながら先行発注依頼を行う業務では、データ項目が100を超える大画面となったが、手こずることもなく完了した。
このほか社内各部門からIT部門への依頼事項を受け付ける業務もシステム化した。楽々WFそのものはJavaで作られており、Javaの経験がない担当者は当初不安もあったが、「HTMLの知識を活かしていろんなバリエーションの承認業務を簡単にシステム化することが確認できました。また、楽々WFのサポートサイトは、単に質問に回答するだけでなく、技術的課題に対して提案型の回答を返してくれるので助かりました。ERP連携の本格開発を控えたこの時期に手応えをつかめたのは大きかったですね。」と当時を振り返る。
「仕事のやり方が変わった」
2009年3月に稼動した新しい基幹システムで、ERPと並ぶ、もうひとつの主役が楽々WFだ。それまで、社員は電話やFAXなど、いろんな手段・ルートで依頼を受け、誰の承認を受けるか考えながら仕事を進めていたが、ワークフローベースの業務に統一された。承認依頼通知のメールを起点とし、社内・社外どちらからでも楽々WFの画面で業務データの確認や承認・否認を行うだけでよく、誰に回付するかなど承認経路を意識する必要もない。楽々WFの画面で業務データもすべて確認でき、見積書などの資料添付やコメント記入もできるため、楽々WF画面を基幹システムそのものと思い込んでいる社員もいるのだという。
基幹システム構築のきっかけであったJ-SOX対応についても「楽々WFの承認経路一覧画面をみれば、どんな条件のときにどんな経路を通るのか一目瞭然のため、J-SOX監査の際もこの一覧画面を提示するだけでOKでした。」と担当者は話す。最後に今後の展開について担当者に聞いた。「単体での承認システム、ERPとの連携と、順調に稼動しており、さらに楽々WFを活用していく予定です。まず、BIツールと楽々WFを連携することでビジネスの意思決定迅速化を支援していくシステムを構築していきたいと考えています。ERPは今後海外にも対応していく予定なので、楽々WFの多国語対応機能も活用していきたいですね。」