株式会社エクサ
引合いからプロジェクト完了までの各イベントをワークフロー化
目次
株式会社エクサ
全てのプロジェクト情報を一元管理する
「プロジェクト情報掲示板」を新規稼働。
不連続なシステムをコントロールし、連続化を実現。
株式会社エクサ(以後、エクサ)は、世界有数の鉄鋼メーカーであるJFEスチールと、グローバル企業であるIBMを母体としたシステムインテグレーター(SIer)である。二つの母体から継承したノウハウを、製造業、流通業、金融、保険、カード業、公共・公益企業など様々な業界に提供し、お客様の高い信頼と評価を得てきた。同社では楽々WorkflowIIを導入し、2008年2月、新たに「プロジェクト審査情報管理システム(PLOG)」を稼働させた。システム構築プロジェクトごとに、顧客からの引合いから、プロジェクト完了までの全ての審査情報をこのシステム上で共有、管理するシステムである。このシステムでは、プロジェクトの各段階ごとに個別のワークフローが存在する。楽々WorkflowIIの導入により、この複数の不連続なワークフローを連続化させ、シームレスなシステムを実現した。
プロジェクト審査状況の可視化
近年、プロジェクト管理の重要性がますます高まり、大規模化、複雑化するプロジェクトの透明性が問われている。プロジェクトがその目標を達成するためには、プロジェクトが適正に遂行されると同時にその状況が正しく把握され、共有化できることが重要となる。
エクサでは、従来から明確なルールに基づいたプロジェクト審査が行われてきたが、プロジェクトを可視化し状況を簡単かつタイムリーに把握できれば、審査の質が更に向上するという認識があった。内部統制の強化やプロジェクト採算性向上のためには、プロジェクトの状況をタイムリーに把握し、社内関係者に公開する仕組み作りが不可欠と判断し、2007年1月にシステム構築に着手した。全社レベルのプロジェクト審査や品質管理、セキュリティ管理を行う、クオリティマネジメント部が指揮をとることになった。
当事者間で書類や一部電子データにより実施しているプロジェクト審査を、提案見積段階から、稼動・納品するまで、全て「情報掲示板」上で行うようにするという構想であり、情報を共有化することで、プロジェクトの問題をタイムリーに検知して、早い段階で適正化する、そのようなシステムを目指すことになった。「システム化というと、その目的は効率化を図るというのが一般的ですが、今回は効率化を狙ったシステムではありませんでした。ルールからの逸脱を禁止する、プロジェクトの状態を可視化してタイムリーなアクションを促す、そのようなシステムを目指したのです。」と、当時クオリティマネジメント部長だった森田氏は語る。
連続したワークフローと不連続なイベント
プロジェクトチームは、まず現状の業務フローを徹底的に洗い出した。所定の経路に沿った審査、否認された場合の再審査など、現状を細部にわたって洗い出し、どのように審査が流れるのかを図式化した。引合いからプロジェクト完了までのそれぞれの段階を「イベント」と呼び、イベントごとに個別のワークフローが存在するという形となった。(下図)
次にこれを、システムの画面上で可視化する具体的なイメージを検討した。その結果、画面全体をプロジェクト審査情報の掲示板という位置づけとし、時系列順に掲示板にイベントを貼り付け、それぞれのイベントには個別のワークフローが存在する形にする、という結論になった。不連続と連続が混在、つまり、イベントとイベントは不連続、イベントの中では、連続したワークフローがそれぞれ動くということであった。クオリティマネジメント部宮田氏は当時を振り返りこう語る。「それぞれ業務ごとのまとまりを見つけ出し、それぞれが不連続なもの、または連続しているか、切り分けを整理するのが大変でした。」
楽々WorkflowIIが見せた「まさにこれ」のイメージ画面
システム化の方向性が固まったことを受けて、パッケージソフトを軸とした実現方法の比較検討が始まった。ワークフローシステムと文書管理システムのパッケージソフトを調査した。各社から提案を受けるも、どの提案も、柔軟性に制限があり、基本的に製品機能をそのまま使用して、業務をパッケージソフトに合わせる、といった内容であり、「情報掲示板」のイメージからは程遠いものであった。結局、新規開発を含めた比較検討の結果、要求との乖離はあったものの、あるワークフロー製品の採用をほぼ決定した。
そんな時、当時クオリティマネジメント部だった柴原氏は、「文書管理システム」の提案を求めていた住友電工情報システムから予想外の提案を受けた。エクサからの「不連続と連続が混在する情報掲示板」という要求に対して、今までアプローチしてきた各社の提案とは全く異なり、ほぼイメージ通りの画面を試作してきたのだ。それを見た森田氏は、「まさにこれだと思いました。我々が求めていたものを、1時間のプレゼンテーションの中で忠実に表現してくれました。他社は、パッケージソフトをそのまま使うように勧めてきましたが、住友電工情報システムは違っていました。楽々WorkflowIIというワークフローシステムのパッケージソフトと、Java開発ツールである、楽々FrameworkII(*)との組合せにより、柔軟なシステム構築の実現を提案してくれました。」と、振り返る。こうして、エクサでは、2007年の7月に楽々WorkflowIIの導入を決めた。
* 楽々FrameworkII…Webベースの基幹システム開発をターゲットに開発されたJavaの開発ツール。信頼関係をベースに要求を実現
2007年12月内の完成を目指して、エクサと住友電工情報システムのSEとの間で、何度も提案・検討が繰り返された。打合せは週2回、時には長時間に及ぶこともあった。エクサ側の、これで良いという言葉にも、住友電工情報システムは、即座に開発ツールである楽々FrameworkIIを使って「こうではないですか?」と実際にその場で作り変えて提案し、完成度を高めていった。こうして要件定義が確定したのは9月のことであった。「他のパッケージソフトとの大きな違いは、楽々WorkflowIIは、こちらの要望することは、何でもできる、しかもそれを開発委託でなく自分たちの手でできる、という雰囲気をもっていました。」、と宮田氏は言う。
楽々WorkflowIIと、楽々FrameworkIIの基本講習、応用講習も行われた。特に応用講習は、システム開発者ではないプロジェクトメンバーで簡易開発を可能とすることを目的としていたため、エクサ向け専用に作成されたサンプルを用いて、実践的、具体的な内容で実施された。また、講習後も、エクサ側の質問と住友電工情報システムからの回答のやりとりが頻繁にあり、こうして、エクサでの開発はスムーズに進み、予定通り一ヶ月間で開発は終了、10 月中旬に「プロジェクト審査情報管理システム(PLOG)」が完成した。
住友電工情報システム側のサポート担当者は、長時間をかけた打合せや、やり取りの中でお互いの信頼性が高まったことが、システム導入成功の要因であったと振り返る。(下図)
導入説明会を経て本格稼動、そしてさらなる展開へ
システム完成を受けて、2007年11月から、社内関係者へのシステム導入の説明会を行った。
コンプライアンス上、必須であるとの認識はエクサ社内でスムーズに受け入れられ、2008年2月に本稼動を迎えることとなった。
2008年2月現在、このシステムは、全社審査対象となる大口プロジェクトに限定して運用されているが、今後、各事業部門内管理の小口プロジェクトを含む、全てのプロジェクトに対象を拡大していく予定である。ルールの徹底、情報の可視化と情報共有。「プロジェクト審査情報管理システム」の社内の浸透、社員への啓蒙を目指し、クオリティマネジメント部の取り組みは続く。
ワークフローを連続化したシームレスなシステム
初期登録時、受注時、終了時は、掲示板の基本情報に情報を登録
各イベントは、発生の有無/発生順番/発生回数が不定。従ってラベル化し、発生の都度、貼っていく。
各イベント発生時には、順次ラベルを掲示板に貼っていく。ラベルを貼ると、事業部による情報登録→審査部署による情報登録→事業部による内容確認/承認といったラベル内独自のワークフローが動き出す。