サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ
米国本社からも承認を得た楽々WebデータベースでSAPとの連携も実現
目次
市民開発者による推進で、
一業務につき200時間/年削減を達成
米国本社からも承認を得た楽々Webデータベースで
SAPとの連携も実現
M&Aによる組織拡大を支える
「業務改善プラットフォーム」を確立
米国に本社を置くサーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループは、M&Aに伴う管理業務の煩雑化などの課題を解決するため、米国本社からもスムーズに承認を得た楽々Web データベース(以下、楽々WDB)を導入。ユーザ部門が自律的に業務アプリを開発する市民開発により、管理業務の標準化を進めた。こうした取り組みを通じて、同社はM&Aによる組織拡大を支える「業務改善プラットフォーム」を確立。一業務で200時間/年の業務削減を実現するなどの導入効果を得ている。
積極的なM&Aに伴う、管理業務の統合が課題
既存システムのサポート終了が決まり、
新たなシステムの導入を決定
米国マサチューセッツ州に本社を置き、世界約70カ国に12万人以上の従業員を擁するサーモフィッシャーサイエンティフィック インコーポレイテッド。その日本法人を束ねるサーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ (以下、サーモフィッシャー)は、医薬・バイオ企業などに向けて、分析機器の販売や保守サービスを提供する総合科学サービス企業だ。サーモフィッシャーが全世界で掲げるミッション「世界をより健康で、より清潔、より安全な場所にするために、お客さまに製品・サービスを提供する」のとおり、先進的な科学ソリューションの提供を通じて、社会におけるサイエンスの発展に貢献してきた。
同社の成長を支えるのがM&A戦略だ。グループ全体でM&Aを積極的に推進し、グローバル規模で事業の幅を広げてきた。サーモフィッシャーも複数の買収や合併を経て、現在の姿に至っている。しかし、そのなかで直面する課題もあった。その一つが管理業務の煩雑化だ。M&Aに伴う課題について、シェアードサービスセンターとしてDXを推進するJapan Digital & IT ビジネスパートナーの矢島弘美氏は説明する。
「合併の際には、合併先と管理業務などを標準化して統合する必要がありますが、この作業に要する手間は多大でした。合併先ではさまざまな部門で独自のExcelファイルや業務アプリが乱立しており、それを用いた管理業務の手法もバラバラです。さらに、Excelファイルや業務アプリの管理担当者が退職などで不在になっていることも珍しくありません。そのため、私たちIT部門の担当者は、M&Aのたびに合併先の管理業務の状況を洗い出して、一つひとつ統合していく必要があります。しかし、IT部門の人員には限りがあるため、その作業に割くリソースが常に不足している状況でした」(矢島氏)。
従来、サーモフィッシャーでは他社製のWebデータベースシステムで管理業務を運用し、業務の標準化や統合も行っていた。しかし、そのシステムは2023年を期限にサポートが終了する。当時、新たなM&Aを推進中であったサーモフィッシャーは、管理業務の統合を進めるためにも、後継システムへの移行が求められていた。
米国本社からもスムーズに承認を得た、楽々WDB
SAPとの連携や市民開発の促進で、
導入効果の引き上げを図った
新たなシステムの導入にあたって、サーモフィッシャーは「既存システムの運用を再現できること」「長期利用でコストメリットが得やすいオンプレミス製品であること」「市民開発が可能であること」などの要件を設定した。なかでも、重視したのが市民開発だった。新たなシステムではIT部門の負担を減らしながらも、IT部門がしっかりと統制を取りつつ、市民開発による業務の標準化や効率化を進められる体制を目指した。
上記の要件を軸に、サーモフィッシャーは約10種類の製品を比較検討。そのなかで、最も高評価を得たのが楽々WDBだった。楽々WDBはExcelファイルからアプリを開発できるなど、市民開発を容易にする機能を備えているほか、オンプレミス製品のためコストメリットも期待できた。サーモフィッシャーで新たなシステムを導入する際には米国本社の承認が求められるが、いくつかの他製品との比較検討の結果、導入はスムーズに承認された。
2022年、楽々WDBを選定したサーモフィッシャーは移行作業に着手する。移行にあたっては、既存システムの運用を再現するだけでなく、管理業務をより効率的に行うための工夫を数多く実施した。
その一つがSAPとのデータ連携。従来、サーモフィッシャーではSAPに登録された情報をダウンロードし、注文情報や製品情報などのリストを作成する作業を複数の部門が行っていた。
そこで、SAPから自動エクスポートした情報を楽々WDBに自動インポートし、楽々WDB上で注文情報や製品情報などを確認できるアプリを開発した。このアプリでSAPから連携された情報を各業務に合わせた形式で加工やマージし、楽々WDBのテンプレート機能で閲覧できるようにした。また、各Excelフォーマットへ出力した上で集計、分析などにも活用している。
さらに、市民開発にも力が注がれた。導入時やその後の運用フェーズでは、各部門が主導となり、数多くのアプリが開発されている。その一例を、サービスエンジニアフィールドサービスの小林明氏は紹介する。
「サービスエンジニアはお客さまから製品の修理などの依頼を受けた際に、事務スタッフに見積書作成に必要な『見積依頼』を送ります。従来、見積依頼はメールにベタ打ちする形で作成していたのですが、社内データベースなどの複数のシステムから情報を参照する必要があるため、作成にはかなりの手間と時間を要していました。そこで、楽々WDBで見積依頼を実施できる「見積依頼アプリ」を開発。複数のシステムとデータ連携し、入力フォームに製品のシリアルナンバーを入力するだけで必要な情報が自動表示される仕組みを構築しました」(小林氏)。
小林氏は「楽々WDBはとにかく操作性が優れていて、特別なITスキルがなくても当初に望んだアプリを開発できました」と話す。サーモフィッシャーは、こうした市民開発を数多くの部門で推進し、楽々WDBを広範囲に浸透させていった。
一部業務では約200時間/年の業務削減効果
楽々WDBの機能が各部門で業務効率化を後押し
サーモフィッシャーは2023年5月から楽々WDBの運用を開始し、約1年で8部門、300ユーザへのシステム展開を達成した。従来、既存システムで実施していた業務のほとんどが無事移行され、M&Aに伴う管理業務の統合も楽々WDBで実施可能になった。
また、システム移行に留まらず、業務効率化の効果も着実に生まれている。上記の見積依頼アプリの開発により、見積依頼に要する時間は約30%短縮され、年間では約200時間の業務時間が削減された。こうした効果はその他の部門でも生まれており、例えば、生産部門では他部門との情報共有に関する業務が効率化されている。その状況について、オリゴDNA生産の田口康之氏と小森一史氏は解説する。
「私たち生産チームでは、お客さまから受注を受けるオーダーサポートチームとの情報共有に楽々WDBを利用しています。従来、この業務は既存システムで行っていましたが、楽々WDBの各種機能を活用することで、以前よりもオーダーサポートチームとのコミュニケーションがスムーズになりました」(田口氏)。
「特に有用だと思うのはメインアプリとサブアプリの機能です。以前は情報共有をする際にも、チーム間が同じインターフェースで情報を入力したり閲覧したりしていました。しかし、メインアプリとサブアプリの機能を用いれば、同じアプリでも表示先によって表示項目や表示順などを変更できます。この機能を活用することで、以前よりも両チームが必要な情報を効率的に取得できるようになりました」(小森氏)。
楽々WDBは「業務改善プラットフォーム」
市民開発の体制を活かし、さらなる組織拡大を目指す
楽々WDBの導入を振り返って、矢島氏は「『組織拡大を支える業務改善プラットフォーム』を確立できました」と手応えを語る。今後もM&Aによる組織拡大を見据えるサーモフィッシャーにとって、既存業務を手軽に統合・改善できる楽々WDBは心強い味方なのだという。
「今回の導入で特に手応えを感じているのが、市民開発を実現できたことです。各部門の担当者が自主的に業務を見直せる体制が整ったため、今後はIT部門の負担を増やすことなく、M&A後の業務の統合や改善を進められます。実際に、各部門の従業員が業務改善事例を発表する『Digital Day』でも、楽々WDBを活用した事例が続々と発表されています。こうした体制は、当社の組織拡大を支える原動力になってくれるのではないでしょうか」(矢島氏)。
組織の合併や再編、統廃合の際には、既存業務の見直しが必ず求められる。新たな組織にフィットした業務をいかに構築するかが、その後の命運を握っているといっても過言ではないだろう。サーモフィッシャーは拡大する組織を前進させる原動力として、楽々WDBを活用している。
ビジネスパートナー
矢島 弘美 氏
フィールドサービス
小林 明 氏
田口 康之 氏
小森 一史 氏