株式会社リンガーハット
全国の店舗からの報告がリアルタイム化。業務の適正化にも寄与
目次
全国約700か所の店舗管理を楽々Webデータベースで効率化
店舗からの報告をリアルタイム化し、コロナ禍の危機を乗り越えた
長崎ちゃんぽんの全国チェーン「リンガーハット」を筆頭に、とんかつの「濵かつ」など、複数の外食事業を展開する株式会社リンガーハット(以下、リンガーハット)は、全国約700か所の店舗で実施していた紙の帳票による報告業務を効率化するため、楽々Webデータベースを導入。従来、膨大な時間を費やしていた紙帳票への記入作業や集計作業を削減し、店舗の状況をほぼリアルタイムで把握可能にした。導入当時はコロナ禍の真っ只中であり、飲食店の閉店時間短縮などさまざまな不測の事態が降りかかったが、店舗からの報告のリアルタイム化により、組織運営の混乱を抑えることができた。
紙の管理帳票の作成や、Excelへの転記作業が多大な業務負荷に
コロナ禍の不測の事態に対応するため、報告業務の効率化に着手
長崎ちゃんぽん専門店をはじめ、全国に約700か所の飲食チェーンを展開するリンガーハット。食材に利用する小麦や野菜は100%国産を貫き、健康的で安全安心な食の提供を信条としている。2022年には創業60周年を迎え、新たな時代に対応した人財育成や職場環境の構築に力を注いでいる。
日本を代表する飲食チェーンの一つとして高い知名度を誇るリンガーハットだが、2020年以降は苦しい状況にもさらされた。コロナ禍の発生だ。緊急事態宣言の発令などにより、飲食店の営業時間は制限され、食事の提供や接客にはさまざまな感染対策が求められた。こうしたなかで、同社は2020年に社内の「情報システムチーム」を「DX推進チーム」に組織再編。Withコロナ、Afterコロナの時代に向けて、デジタル技術を活用した店舗改革に着手した。2021年にはグループの全700店舗に業務用のタブレットを導入。従来、紙の冊子で配置していた業務マニュアルなどを電子化し、店舗のペーパーレス化を進めた。
そして、これに前後して実施したのが楽々Webデータベースの導入だ。以前、リンガーハットの店舗では、開閉店時に実施する業務チェックリストや業務日報などの約20種類の管理帳票を紙で運用していたが、これは不都合が少なくなかったとDX推進チーム部長の是末英一氏は振り返る。
「以前、当社では、店舗スタッフが各管理帳票を手書きで作成し、その内容をブロック長がExcelに転記。さらに、そのExcelファイルをブロック長が社内ポータルサイトの掲示板にアップロードする形で、店舗からの報告業務を行っていました。しかし、手書きの管理帳票は誤記や抜け漏れが発生しやすく、本社が店舗の状況を正しく把握するうえでの妨げになります。また、Excelへの転記やデータの集計には時間を要するため、全国約60名のブロック長は多大な業務負担を抱えていました」(是末氏)。
この状況はコロナ禍後、さらに大きな課題となる。感染拡大の状況によって、各都道府県の飲食店への制限は様々で、急な閉店や営業時間の変更、その他のイレギュラーな事態が続出したのだ。刻々と変化する状況を適切に把握するためには、Excelへの転記などの作業を省略し、報告業務にかかる時間を縮める必要があった。こうしたなかで、リンガーハットは従来の報告業務の見直しに着手する。
サーバ単位のライセンス体系やノーコードによる開発機能が導入の決め手に
プログラミング未経験の担当者を中心に、数時間でシステムの展開を実現
報告業務を見直すなかで、リンガーハットはExcelへの転記などの削減が可能なシステムの導入を検討する。その際に、重視したのがシステムのライセンス体系だ。リンガーハットではアルバイトを含めて約8,000人の店舗スタッフが勤務している。ユーザ単位で課金されるライセンス体系では莫大な予算が必要となるため、数千人規模のユーザ数でも比較的安価に利用できるシステムが求められた。
そうしたなかで選定されたのが楽々Webデータベースだ。楽々Webデータベースは、クラウド版のユーザ単位課金に加え、オンプレミス版のライセンスも設けている。ユーザ単位以外のライセンス体系を求めていたリンガーハットにとって、楽々Webデータベースはうってつけのシステムだった。
さらに、選定にあたっては、ノーコードでアプリケーションや帳票を作成できる機能も高く評価された。DX推進チーム係長の児玉竜司氏は、選定時に実施したデモの状況を説明する。
「DX推進チームに配属されるまで、私は開発業務経験がありませんでした。現在もプログラミングの知識はほぼありません。しかし、そんな私であっても難なくアプリケーションを開発できることに驚きました。特に、帳票の作成に関しては、Excelと操作性がほとんど同じで、それまでの業務知識で十分対応できました。実は、楽々Webデータベース以前に別の製品のデモを見ているのですが、その製品は表計算の行や列をドラッグ&ドロップで移動できないなど、操作しにくさが気がかりでした。楽々Webデータベースには、そうした懸念が一切なく、すんなり導入に踏み切ることができました」(児玉氏)。
2021年初頭、楽々Webデータベースの導入を決めたリンガーハットは、本格的な導入作業に移行する。導入の体制は是末氏と児玉氏に加え、ベンダーのSEが1名。まず初めにベンダーのSE がプロトタイプとなるアプリケーションを開発し、それを参考に児玉氏が管理帳票を電子化していく手順を採った。児玉氏は店舗で利用している管理帳票約20種類のうち開閉店時の業務チェックリスト、業務日報、個人衛生チェック表、納品チェック表など、7種類の管理帳票にスコープを絞り、レイアウトをタブレット向けに調整するなどして、電子化を進めた。導入は楽々Webデータベースの操作性の高さが強力な後押しとなり速やかに進行。数時間で7種類のアプリケーションを開発することができた。
また、アプリケーションの展開後には、店舗での利用率向上にも力を入れた。当初、楽々Webデータベースの利用率は5割程度。使い慣れた紙の管理帳票の廃止に戸惑う店舗スタッフは少なくなかった。そこで、児玉氏らはシステムの利用状況を店舗ごとに一覧化し、経営層を含めた全社で共有するなどして、利用率の底上げを図った。この取り組みにより、全国約700店舗での利用率は8割以上に向上。今後もさらなる利用率の向上が見込まれている。
タブレットを活用し、店舗からの報告をリアルタイム化
店舗業務の適正化にも成功し、内部統制も強化
楽々Webデータベースの導入により、リンガーハットでは店舗からの報告業務が大幅に効率化した。従来、店舗スタッフが紙の管理帳票に手書きで記入していた作業は、タブレットへの入力作業に置き換わり、以前はブロック長が実施していたExcelへの転記や集計、社内ポータルサイトへのアップロードなどは一切不要になった。本社側も楽々Webデータベースを通じて、店舗の状況をほぼリアルタイムで把握できるようになることで、コロナ禍における営業制限や自然災害などの不測の事態に対して迅速な状況判断が可能になった。
さらに、楽々Webデータベースは内部統制の強化にも貢献していると児玉氏は話す。「楽々Webデータベースはファイルへの入力時間や変更履歴など、各種履歴が詳細に記録されます。そのため、店舗スタッフは報告業務を所定の時間や手順で行う必要があり、結果として、店舗業務の適正化が進んでいます。当社のように全国に多数の店舗を展開している企業にとって、組織の隅々まで統制を効かせるのは至難の業です。それを一つのシステムの導入で大幅に進めることができたのは、大きな成果だと思います」(児玉氏)。
楽々Webデータベースで店舗の紙の帳票を約3割削減
今後は食材管理など、他の業務にもシステムを展開予定
現在、リンガーハットは楽々Webデータベースのさらなる展開を通じて、店舗のペーパーレス化を推進している。これまでも楽々Webデータベースの導入により、店舗の紙の帳票を約3割削減した。今後は、その他の管理帳票にも導入の範囲を広げ、店舗の完全ペーパーレス化を目指す方針だ。
さらに、是末氏は「報告業務だけでなく、他の業務にも楽々Webデータベースを活用していきたいです」と今後の展望を語る。
「例えば、食材の賞味期限チェックに、楽々Webデータベースを活用できるのではないかと思案しています。店舗には多種多様な食材が保管されており、それぞれ賞味期限が異なるため、店舗スタッフは定期的に賞味期限をチェックする必要があります。現在、賞味期限の管理には紙のラベルが利用されているのですが、この取り扱いが煩雑で店舗スタッフは手を焼いているようです。そのため、こうしたラベルを楽々Webデータベースで電子化し、他のシステムと連携して、タブレットに賞味期限に関する情報を自動表示できれば、店舗業務はさらに効率化すると思います。現在はまだまだ構想段階ですが、こうした取り組みを可能にする情報基盤として、楽々Webデータベースに期待を寄せています」(是末氏)。
地方拠点の状況把握や統制強化、緊急時の迅速な対応。数多くの拠点を有する企業であれば必ず直面する課題を、リンガーハットは楽々Webデータベースの活用によって乗り越えている。今後、同社がどのようにシステムを活用し、さらなる成果を上げるのだろうか。これからの動きにも注目だ。
株式会社リンガーハットDX推進チーム部長 是末 英一 氏
係長 児玉 竜司 氏 ※本事例中に記載の社名や肩書き、数値、固有名詞等は取材時点の情報です。