エヌ・イー ケムキャット株式会社
情報資産の有効活用を実現
目次
エヌ・イー ケムキャット株式会社
研究開発センターでの仕様書や論文などの文書検索を大幅効率化
画像OCR検索などの機能により、情報資産の有効活用を実現
排気ガスを無害化する自動車触媒や、石油化学に用いる化学触媒など、「触媒」を事業ドメインとする化学メーカーのエヌ・イー ケムキャット株式会社(以下、エヌ・イー ケムキャット)は、自社の研究開発センターで利用していた文書解析システムをQuickSolutionにリプレイス。高額かつ多大な管理工数を費やしていた旧システムを刷新し、画像OCR検索などの各種機能を活用した精度の高い検索体制を実現した。これにより、以前は利用が困難だった過去の資料や知識の有効活用が可能になっている。
文書解析システムの利便性が悪く、ユーザの利用率も低迷
システム維持のための手間や保守費用が費やされていた
東京都港区に本社を有し、静岡県沼津市と茨城県坂東市の2か所に製造・開発拠点を展開するエヌ・イー ケムキャット。1964年の創業以来、「触媒」を事業ドメインに日本の化学産業の発展を支えてきた。主力となる自動車触媒の領域では、自動車の排気ガスを無害化する排ガス浄化触媒を提供。世界的に強化が進む排ガス規制に対応した製品の開発により、地球環境保護に貢献してきた。また近年では、サステナブルな社会の実現に向けた新たな事業領域にも注力し、水素やアンモニア等のエネルギーバリューチェーンに用いられる触媒の開発などにも取り組んでいる。
こうした新たな取り組みにおいて、重要な役割を果たしている研究開発センターは、基礎研究から製品開発までのさまざまな研究を手がけ、エヌ・イー ケムキャットの屋台骨を支えている。
組織の技術や知識を司る同センターの活動には、社内に蓄積した情報を有効活用できる体制が欠かせない。そうした体制づくりに貢献を果たしているのがQuickSolutionだ。以前、研究開発センターでは、文書解析システムで各部門のシステム内に保管された文書のテキストを分析して、文書ファイルを検索する仕組みを築いていたが、ユーザへの定着がなかなか進まず、情報資産の有効活用に至っていなかった。当時の状況について、研究開発センター技術企画部マネージャーの西坂洋輔氏は振り返る。
「以前利用していたシステムは解析の処理が重く、1GBのデータを解析するにも30秒以上を要するほどでした。そのため、データサイズが1TBともなればシステムはほとんど動きません。また、テキストを解析するための類語辞書の精度も不十分で、例えば元素の『リン』という単語を登録すると『ミリング』『シンタリング』などの『リン』を含む無関係な単語まで分析してしまい、余計な情報が大量に検索されました。こうした状況のため、ユーザにもなかなかシステムが定着せず、利用率は低迷が続いていました」(西坂氏)。
一方でシステムの維持には定期的なメンテナンスが必要になり、検索対象となるデータベースの管理や類語辞書の登録などに多大な手間や保守費用を費やしていた。こうした状況を改善するためにも、新たな文書検索のあり方が求められていた。
画像形式PDF内もOCR機能で検索できるQuickSolutionを高く評価
標準装備の辞書機能などを活用し、スムーズな導入を実現
研究開発センターにおける文書検索の状況を問題視した西坂氏らは、新たなシステムの導入に向けて情報収集を開始。その末に、エンタープライズサーチの導入を決め、複数の製品の比較検討を行い、QuickSolutionを含む2製品でデモによる機能確認を実施した。
結果はOCR機能が決め手になり、QuickSolutionが選定された。QuickSolutionは、テキストデータに加え、画像形式のPDF内や画像ファイルに映り込んだ文字も検索対象にすることができる。研究開発センターでは過去の紙ベースの資料を大量にスキャンし、PDFとしてデータ保存していたため、これらのデータを検索できる点が導入を後押しした。
2022年1月、エヌ・イー ケムキャットはQuickSolutionの導入作業を開始。研究開発センターが中心となり、本社の情報システム担当者と連携しながら導入を進めた。
当初、研究開発センターは共有フォルダ内のすべてを検索対象として想定していたが、そのなかには測定データを記録しただけの数万行のデータファイルなど、検索対象としては不適切なファイルも含まれていたが、QuickSolutionの設定でこれらの不要なファイルを除外し、数TBのデータに対してスムーズな検索を実現している。
また、導入にあたっての辞書登録ではQuickSolutionの強みが際立った。以前のシステムの管理を担当していた研究開発センター技術企画部の小野田宏美氏は、QuickSolutionの辞書機能の利便性について話す。
「QuickSolutionはシソーラス基本語辞書を標準機能として備えているため、一般的な単語の辞書登録が不要です。また、表記の揺れや同義語も含めて検索する機能も備えているため、類語を登録する手間も大幅に省かれました。以前のシステムでは一般的な単語や類語も一つ一つ登録しなければいけませんでしたが、QuickSolutionでは社内の独自用語や専門用語だけを登録すればよいため、管理工数は大幅に削減されています」(小野田氏)。
こうした取り組みを通じて、研究開発センターはQuickSolutionの導入を推進。2022年4月に運用開始に至った。
研究員の80%以上がQuickSolutionを利用し、検索回数は150回/日以上に
社内に眠っていた知識を掘り起こし、新たな研究への活用を可能にした
運用開始から約1年が経過した2023年4月現在、研究開発センターではQuickSolutionの定着が進んでいる。導入から現在まで、研究開発センターの研究員の80%以上が週1回以上QuickSolutionを利用し、15%は毎日利用している。1日の検索回数は150回以上であり、QuickSolutionによる検索は日常的な風景になった。また、システムへの満足度も高く、社内で実施したアンケートでは約70%の研究員が「とても良い」「良い」と回答している。
これにより、研究開発センターの研究員たちは、従来は辿り着くのさえ困難だった資料や情報にスムーズにアクセスできるようになった。研究開発センター技術企画部シニアスタッフの高橋さやか氏は、QuickSolution導入による情報活用の効果を説明する。
「これまで社内に眠ったままになっていた仕様書や論文を有効活用できるようになりました。例えば、若い研究員からは『10年以上前の資料を検索して、閲覧できるようになった』という声を聞きました。それら資料のなかには、当時の担当者がすでに退職していたり、別の部門に異動していたりして、ただ共有フォルダ内に保存されていたものも少なくありません。しかし、現在では、そうした情報資産を活用して、新たな研究や開発に生かすことができるようになりました」(高橋氏)。
また、高橋氏は、QuickSolutionの類似文書集約機能が、こうした効率的な検索を可能にしていると指摘する。QuickSolutionには、AIが文書の内容を解析し、類似した文書を集約して表示する機能が備わっているため、同一の文書が検索対象の複数箇所に保存されていても、一つの検索結果として表示可能だ。研究開発センターの共有フォルダ内にも、研究員それぞれが保存した同一の文書が数多く存在していたが、この集約機能により重複した検索結果が表示されることがなく、研究員は目的の文書にスムーズに辿り着くことができている。
今後は他部門にもQuickSolution の展開を予定。
他システムとの連携を通じて、全社での利用を目指す
QuickSolutionの導入を成功させたエヌ・イー ケムキャットは、今後、研究開発センター以外の部門にもシステムの展開を検討している。本社で情報システムを担当する経営企画部シニアスタッフの名取健介氏は、今後のQuickSolution活用の展望を語る。
「現在、当社ではグループウェアのリプレイスをはじめとした、各種DX施策を推進しています。QuickSolutionは豊富なAPIを提供していますし、文書管理システムやワークフローシステムなど、さまざまなシステムとの連携が可能です。こうしたシステム連携などを通じて、QuickSolutionの適用範囲を広げていきたいと考えています。例えば、グループウェアとQuickSolutionを連携すれば、研究開発センターだけでなく、全従業員が効率的に文書を検索できるようになり、全社的な生産性向上が実現します。そのため、QuickSolutionには非常に期待を寄せています」(名取氏)。
そのほか、同社はクリックだけで目的の文書に辿り着ける「Click Navi」の活用も検討中。社内文書や、QuickSolutionのWebクロール機能で得られた記事を「安全情報」「市場情報」などのテーマで分類して、Click Naviで表示し、従業員が最新の情報を簡単に閲覧できる体制を模索している。
長年にわたり、日本の化学産業を支え続けてきたエヌ・イー ケムキャット。その社内には優れた技術と先端的な知見が膨大に眠っている。QuickSolutionは、それらの情報資産の有効活用を促し、イノベーションの創出を後押しする重要な役割を担っている。
研究開発センター 技術企画部 特許担当 シニアスタッフ 高橋 さやか 氏
研究開発センター 技術企画部 特許担当 マネージャー 西坂 洋輔 氏
経営企画部 IT担当 シニアスタッフ 名取 健介 氏 ※本事例中に記載の組織名や肩書き、数値、固有名詞等は取材時点の情報です。