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テレワークの課題と導入メリットを詳しく解説

新型コロナウィルスの感染拡大などを背景に、オフィスに出勤せずに自宅などで働くテレワークを導入する企業が増えています。

しかし、テレワークの導入にはメリットもある一方で、課題や問題点も存在します。具体的にはどのようなメリットや課題、問題点があるのでしょうか。

当記事では、テレワークのメリットとデメリット、課題の解消法、さらには、導入の判断ポイントや流れについて解説します。

テレワークの課題と導入メリット
目次

テレワークを中止した企業が抱える課題と問題点とは?

近年ではテレワークの促進が顕著になっている一方、テレワーク未導入の企業も少なくありません。また、テレワークを一度導入したものの、途中でテレワークを中止した企業も存在します。

ここでは、テレワークを中止した企業が抱えている課題や問題点について解説します。

業務の課題

はじめに、業務上の課題が挙げられます。具体的には以下のとおりです。

  • 従業員・部門で不公平感が生まれる
  • テレワークに向いた業務が存在しない
  • 生産性が低くなる
  • 人事評価や人材育成が困難になる
  • 商談機会を失う可能性が増加する
  • 稟議や決裁、契約締結など遅延する

それぞれ順番に見ていきます。

従業員・部門で不公平感が生まれる

同じ会社内でテレワークを実施している従業員・部門と実施していない従業員・部門がある場合、社内で不公平感が生じる可能性があります。

たとえば事務系のスタッフ部門がテレワークを実施している一方で、工場の生産ライン部門の社員が毎日出社している場合、後者から不満の声が出ることもあるでしょう。

また、同じ職種でも、管理者の価値観や意向によってテレワークが許可されている部門とそうでない部門が存在します。

このように社内でテレワークの導入率に隔たりがある場合、それが不満の原因となって従業員満足度の低下や離職率の増加につながるおそれがあります。

テレワークに向いた業務が存在しない

テレワークを導入してみたものの、テレワークに向いている業務が存在しないケースも考えられます。テレワーク環境に適した業務がなければ、せっかくテレワークを導入しても効果がありません。

たとえば、対人接客や物理的な商品搬送を伴う業務では、テレワークを導入しても業務を円滑に遂行することが難しいでしょう。

生産性が低くなる

テレワークの導入によって、生産性が低くなる場合も考えられます。テレワークでは自宅などの独立した環境で働くため、上司や同僚からの直接的な視線がありません。

そのため、つい気が緩みがちになり、仕事への集中力が低下することもあるのです。

ただし、テレワークにおける生産性については賛否両論あります。静かな環境で集中できる人もいますので、結局のところ従業員それぞれの特性による部分が大きくなるでしょう。

人事評価や人材育成が困難になる

テレワークでは人事評価や人材育成が難しくなりがちです。従業員の働きぶりを直接確認できないため、仕事の取り組み姿勢や業務プロセスの評価がしにくくなります。

業務成果面のみを人事評価の観点とする場合はあまり支障がないかもしれませんが、業務プロセス面も評価する場合は困難を伴うでしょう。

また、テレワークでは新入社員や若手社員に付き添って指導を行うこともできないため、従来のような手厚い人材育成ができない点も課題です。

商談機会を失う可能性が増加する

テレワークによって、商談機会を失う可能性も考えられます。テレワークではWeb会議上での商談となるため、どうしても無機質なやり取りになってしまう傾向にあります。

これまでの対面での商談のほうが相手の表情やしぐさを直接感じ取ることができるため、提案や説明フォローがしやすいと感じる方も多いでしょう。スムーズなやり取りの結果、商談の場で話が発展し、次の商談につながるチャンスもあります。

一方、テレワークでは対面と比べてコミュニケーションを取りづらいため、商談機会が減少する可能性があります。

稟議や決裁、契約締結などが遅延する

テレワークでは、稟議や決裁、契約締結などのフローが停滞しがちな点も課題です。オフィス出社している場合は、「申請をあげましたので、承認をお願いします」のようにその場で一言いえば決裁や契約のワークフローを進めることができます。

一方でテレワークでは、メールやチャットで承認依頼を行うことになります。メールやチャットの場合、すぐに確認して対応できないこともあるため、結果的にワークフローの遅延につながるのです。

セキュリティの課題

前述した業務上の課題以外にも、テレワークではセキュリティの課題があります。セキュリティの課題は、ハードウェア面とソフトウェア面の両面が考えられます。

ハードウェア面:パソコンなどの機器の紛失や盗難のリスク

テレワークでは、自宅やサテライトオフィス、外出先で業務用のパソコンやスマートフォン、タブレット、USBなどを取り扱います。セキュリティゲートが施されたオフィス外でこれらの機器を扱うため、紛失や盗難のリスクが高まる点が課題です。

ソフトウェア面:サイバー攻撃による情報漏えいのリスク

サイバー攻撃によるセキュリティリスクも課題となります。テレワークでは、オフィスの社内ネットワークとは異なり、自宅などから直接インターネットへ接続する場合もあります。

セキュリティ面が甘くなることで、外部からのサイバー攻撃や不正アクセスのリスクが高まり、ハッキングやマルウェアなどの被害に遭うケースも考えられるでしょう。

機器の紛失や盗難、情報漏えいは、個人情報の流出といった甚大な問題につながります。コンプライアンス違反にもなるため、顧客や取引先、株主などのステークホルダーからの信用が失墜し、企業の存続が危ぶまれる事態にもなりかねません。

「テレワークを行う際のセキュリティ対策まとめ!」
https://www.sei-info.co.jp/mcore/basics/telework-security.html

セキュリティの課題

コストの課題

テレワークを導入する場合、さまざまな導入コストや維持コストがかかります。たとえば、以下のようなものが挙げられます。

  • 情報通信機器の調達費用(パソコン、スマートフォン、タブレットなど)
  • 各種オンラインツールの契約費用(Web会議ツール、チャットツール、勤怠管理ツールなど)
  • オフィス外から社内ネットワークにアクセスするためのネットワークの構築(VPNなど)

上記のようなテレワークに必要な環境を一式整備する場合、相応のコストが必要です。これまでテレワークを全く実施していなかった企業や予算に余裕がない企業にとっては、コスト面は大きな課題となるでしょう。

準備や運用の課題

テレワークの導入を決定した後も、準備や運用の課題が生じます。主に以下に示す課題が考えられます。

  • 自宅などにテレワークの環境を整備する必要がある
  • コミュニケーション不足になる可能性がある
  • プロジェクトやタスクの進歩管理が把握しにくくなる
  • 自己管理が難しくなる
  • 労務管理が難しくなる
  • 運動不足から健康被害が起こる可能性がある

各項目について詳しく見ていきましょう。

自宅などにテレワークの環境を整備する必要がある

テレワークを行う場合、自宅などに仕事に適した環境を整備する必要があります。テレワークを行うための準備事項としては、たとえば以下のようなものが挙げられます。

  • テレワークを実施するための部屋や仕切りのある空間を設ける
  • 仕事に適したデスクや在宅勤務用の椅子を用意する
  • 必要な場合は、引き出しや本棚、プリンタなどの周辺設備も用意する
  • 快適な速度のインターネット環境を用意する
  • 各種オンラインツールをパソコンなどの端末にインストールする

企業がテレワークを導入したとしても、いきなり自宅などで仕事を始めることはできません。上記に挙げたような事前準備を済ましておく必要があります。

また、家族がいる場合は、なるべく業務時間中に物音を立てないよう配慮してもらう必要もあるでしょう。反対に、Web会議の音声などで家族の生活に影響を与えないよう気を使うことも大切です。

コミュニケーション不足になる可能性がある

テレワークでは、上司や同僚、部下とのコミュニケーションが不足する可能性があります。テレワーク中はそれぞれが自宅など離れた空間で仕事をするため、お互いの顔を直接見ながら相談や雑談をすることができません。

メールやチャット、電話によるコミュニケーションが中心となるため、コミュニケーションの難易度が上がる、親交が深まらないなどの課題が生じます。

特に新入社員や異動したばかりの社員にとっては、直接会って質問や相談をする機会がなくなるため、孤独感や不安を抱きやすくなるでしょう。

プロジェクトやタスクの進歩管理が把握しにくくなる

テレワークでは、プロジェクトやタスクの進捗管理が難しくなる点も課題です。テレワークでは業務時間中に各メンバーの取り組み状況が見えないため、それぞれのタスクがどの程度進んでいるのかが把握しにくくなります。

また、課題が生じている場合においても、テレワークでは相談しづらく、それぞれのメンバーのなかで抱えて込んでしまう可能性も考えられます。

自己管理が難しくなる

自己管理が難しくなる点もテレワークにおける課題です。テレワークでは、出社する必要もなければ、上司や同僚から直接的に見られることもありません。

そのため、始業時間ギリギリまで寝ていたり、業務時間中も気が緩みがちになったりするおそれがあります。自己管理が不十分になって仕事のパフォーマンスに悪影響が出た場合、業績評価の低下につながってしまいます。

したがって、テレワークではしっかりと自分自身の体調管理やモチベーション管理を行うことが重要です。

また、オンオフの切り替えも大事なポイントです。自宅などで働く場合、仕事とプライベートの境界線があいまいになり、長時間労働に陥る従業員も少なくありません。

業務時間外は業務用のパソコンを見ないなど、意識的にオンオフの切り替えを行っていくことが求められます。

労務管理が難しくなる

テレワークでは労務管理が難しくなる点も課題といえます。従業員が在宅勤務などを行っている場合、業務時間中の就業状況を直接確認することができません。

業務開始や業務終了については、メールやチャットで確認できるでしょう。しかし、業務時間の最中に外出したり、業務とは関係のないことをやっていたりしても、検知することは困難です。いわゆる「中抜け」の問題です。

テレワークでは、従業員の労務管理を適正かつ平等に行うことが課題となります。

運動不足から健康被害が起こる可能性がある

従業員の健康面もテレワークの課題といえます。テレワークでは通勤が不要な分、運動する機会が減少します。

在宅勤務の場合、1日を通じて家から一歩も出ないという人もいるでしょう。このような運動不足の状況が続いた場合、従業員の健康被害につながります。

健康被害が生じると、従業員の長期就労機会の損失や医療費の増加などの問題に発展するため、日常的な健康管理は気を付けるべきポイントです。

テレワークの問題やデメリットの解消法

テレワークには前述のとおり問題やデメリットがあるため、対策を考えることが重要です。ここでは、テレワークの問題やデメリットに対する解消法を解説します。

テレワークの問題やデメリットの解消法

1:コミュニケーションツールの使用

テレワークでは、コミュニケーションが取りにくくなるデメリットがあります。この問題への対処としては、コミュニケーションツールを使用することが有効です。

テレワークに役立つコミュニケーションツールを以下で紹介していきます。

オンライン会議システム

仕事を行ううえでは、関係者との会議が日常的に発生します。テレワークでの会議は、オンライン会議システムを使うと効果的です。

オンライン会議システムでは、物理的に離れた場所にいてもインターネットを通じて会議ができます。資料の画面投影が可能なことに加え、カメラをオンにすることで顔出しも可能です。ZoomやTeamsなどが代表的なツールとなります。

ビジネスチャット

ビジネスチャットは、業務において活用できるチャットツールです。メールよりも気軽にチャットができることが特徴となります。SNSのような投稿機能も備えているため、ブレインストーミングなどのアイデア出しにも活用できるでしょう。

スケジュール管理、グループウェア

テレワークでは、スケジュール管理やタスク管理も課題です。スケジュール管理、グループウェアのツールを使うことで、テレワーク環境でも効率的にスケジュールなどの管理を行えます。

代表的なツールとしては、Microsoft 365などが挙げられます。

情報共有用ツール

オンライン上で資料やファイルなどを共有する際は、情報共有用ツールを利用するのが便利です。複数人がそれぞれ離れた拠点にいる場合でも、1つの場所を参照しながら作業を進めることができます。

オンライン商談ツール

オンライン商談ツールを活用することで、営業担当などが顧客先へ直接訪問しなくても商談を実施できます。オンライン上で商談を行うことで、顧客や取引先とのスケジュール調整の効率化や移動コストの削減につながるでしょう。

プロジェクト・タスク管理ツール

プロジェクト・タスク管理ツールもテレワークにおいて有用です。進捗状況が見えづらいテレワーク環境においても、各タスクの進捗状況をツールで可視化することで、計画的な業務遂行に役立ちます。

ファイルストレージ

テレワークにおいては、出社が必要となる物理的な制約をなくすことが重要です。ファイルストレージを活用することで、資料のオンライン上での管理に貢献します。

契約書や請求書などの紙媒体の資料をデータ化し、ファイルストレージ上で保管することで、テレワークでも出社時と同様に参照できるようになります。

2:クラウド勤怠管理ツールの使用

テレワークでは、労務管理が難しい点も問題として挙げられます。テレワーク環境下でも適切に労務管理を行うためには、クラウド勤怠管理ツールを使用することが効果的です。

クラウド勤怠管理ツールを使うことで、自宅などで働く場合でもWebブラウザやスマホアプリを通じて業務開始時間や業務終了時間を記録できます。また、勤務状況の集計や可視化もシステムが行ってくれるため、効率的な労務管理を実現します。

3:バックオフィスをクラウド化・ペーパーレス化

テレワークで業務を遂行するためには、バックオフィス業務のクラウド化やペーパーレス化が重要です。バックオフィス業務をクラウド化・ペーパーレス化するうえで、以下に挙げるツールが役立ちます。

CTI/PBX

CTI/PBXは、コールセンター業務に活用できるツールです。クラウド上でコールセンター業務に必要な情報や問い合わせ機能を構築することで、オペレーターの在宅勤務を実現します。

SFAシステム

SFAシステムは、営業活動を支援するためのツールです。営業活動に関する情報や業務プロセスを自動化することで、営業活動における情報をデータ化し、データの蓄積や可視化ができます。

SFAシステムを利用することで、営業担当者がそれぞれ離れた場所でも共通的にデータを活用できるようになります。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、稟議や申請を電子化し、ペーパーレスで承認・回覧できるツールです。テレワーク中など、社内にいなくても稟議書を確認・承認することが可能ですので、業務の大幅なスピードアップと効率化が期待できます。

会計・経理システム

会計・経理システムは、決算書作成や債務管理といった会計・経理業務を支援するツールです。

特に決算期では、会計・経理担当は費用処理や決算書作成などで多忙を極めることもあるでしょう。会計・経理システムを使うことで、会計・経理業務の効率化に役立つとともに、会計・経理担当のテレワークを実現します。

経費精算システム

経費精算は、領収書など紙媒体が多く存在する業務であり、テレワークを妨げる業務の1つといえます。領収書などをペーパーレス化し、経費精算システムを使って申請・承認できるようにすることで、テレワークの実現に向けて大きく前進するでしょう。

電子契約サービス

電子契約サービスは、オンライン上で契約書の押印や契約締結ができるツールです。契約書の押印や取り交わしに関しても、経費精算と同様に紙媒体を中心とした業務であるといえます。

そのため、電子契約サービスを利用してペーパーレス化を図ることで、テレワークを実施しやすくなるでしょう。

「バックオフィスとは?今注目される理由や効率化のメリットを解説」
https://www.sei-info.co.jp/it-keyword/backoffice.html

4:セキュリティ対策(ハード・ソフトの環境整備と従業員教育)

テレワークにおける大きな課題は、セキュリティリスクです。したがって、十分にセキュリティ対策を行うことが肝要です。

たとえば、ハード・ソフトの環境整備としては以下のようなものが挙げられます。

  • パソコンなどの端末に対するスクリーンロック機能の設定
  • 社用モバイル端末やUSBなどの携行品の取り扱いルール制定・遵守
  • セキュリティソフトの導入、修正プログラムの適用
  • 社内ネットワーク接続方法のルール制定・遵守

加えて、従業員に対する定期的なセキュリティ教育も忘れずに実施しましょう。

5:評価制度の再考

テレワークを中心とした働き方になる場合、評価制度の見直しが必要となる可能性があります。

テレワークでは業務時間中の働きぶりを直接確認できないため、主に成果物によって仕事のパフォーマンスを評価することになります。つまり、プロセス重視ではなく、成果重視の評価制度がテレワークには適しているということです。

ただし、評価制度を見直す場合は、従業員へ丁寧に説明を行い、社内で混乱をきたさないようにすることが必要です。

6:テレワークできる業務の選別と業務フローを構築

会社の業務は多岐にわたるため、テレワークに適した業務もあれば、そうでない業務もあります。そのため、テレワークを導入する際は、テレワークの対象業務を明確にすることが大切です。

また、テレワークを踏まえた業務フローの構築やツール導入によって、テレワークできる業務の幅が広がる可能性もあります。

7:端末など環境整備や一時金の手当を提供

テレワークを実施する場合、従業員においても自宅などにテレワーク環境を整備するための手間やコストが生じます。

そのため、従業員がテレワークを実施しやすいように環境整備の支援や一時金の手当を提供することも有効です。

テレワークを導入するメリットとは?

課題や問題点もあるテレワークですが、もちろんメリットも多くあります。ここでは、テレワークを導入する主なメリットを紹介します。

テレワークを導入するメリット

生産性が高まる

テレワークを導入することで、仕事の生産性アップが可能です。テレワークでは基本的に自宅などで作業するため、仕事の途中で不用意な雑談や雑用によって集中力が途切れる心配がありません。

特に、自分1人で黙々と作業をするコーディングや資料作成に関しては、集中力を保ったまま効率的に仕事を進められるでしょう。

また、テレワークでは自分が働きやすい環境を自由に選べる点もメリットです。大人数がいる場所で働くことが苦手な人でも、静かな自宅やカフェでなら集中できる人もいるでしょう。自宅やカフェであれば休憩も自分のタイミングでこまめに取りやすいため、1日を通じて高い生産性を維持できます。

自然災害や感染症の流行など非常時に事業継続しやすい

テレワークの導入によって、不測の事態が起きた際でも事業継続しやすくなります。つまり、災害やサイバー攻撃などの不測の事態に対して被害の最小化や早期復旧対応を行うBCP(事業継続計画)に貢献するのです。

テレワークであれば、感染症の流行や公共交通機関の乱れなどがあった際でも、自宅で業務を継続できます。また、クラウド環境に業務上必要なデータを保存しておくことで、自宅でもオフィスと同様に業務ができます。

総務省の「令和3年通信利用動向調査」においても、テレワークの導入目的は「新型コロナウィルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」が9割以上と最も多い割合となっています。

優秀な人材の確保や離職の防止策になる

テレワークによって、優秀な人材の確保や離職率の低下が期待できます。豊富な経験やスキルを持つ人材でも、たとえば出産や育児、介護などで退職しなければならない社員もいるでしょう。

しかし、テレワークであれば実家などでも仕事ができるため、会社にとって貴重な戦力がやむを得ない理由で離職する事態を防止できます。

また、テレワークによってワークライフバランスの充実化を図ることで、採用面でも効果的です。就活生や転職希望者から高い人気を獲得する効果も生まれ、新しい人材確保につながるでしょう。

オフィス代や交通費などのコストダウンが可能

テレワークでは、オフィス代や交通費を中心にコスト削減を図れます。たとえば、以下に挙げるランニングコストの削減が可能です。

  • 社員の通勤費や出張費
  • オフィスの賃貸料
  • 設備のレンタル費
  • オフィスの水道光熱費
  • プリンタの印刷代

各項目の一つひとつの出費は小さかったとしても、トータルで見れば大きなコスト負担となります。

そのため、近年ではオフィスの縮小や売却によってコスト削減を図るITベンチャー企業なども増加しています。

企業イメージを改善できる

テレワークを導入することで、企業イメージの改善効果をもたらします。その理由は、テレワークの導入によって多種多様な働き方を企業として奨励することで、多様性を尊重する企業であると評価されるためです。

また、新型コロナウィルス感染の抑制に貢献することにもなるため、社会から好印象を受けやすくなるでしょう。

さらには、企業イメージの改善・向上によって、前述した優秀な人材の確保や離職防止にもつながります。

通勤時間がなくなり、生活の質が改善する

テレワークであればオフィスへ通勤する必要がないため、プライベートや自己研鑽により多くの時間を使うことができます。

たとえば、以下のようなことにもこれまで以上に注力できるでしょう。

  • 家族とコミュニケーションを取る時間
  • 自分自身の趣味や娯楽の時間
  • 資格や新しいスキルを習得するための学習時間
  • 十分な睡眠を取るための時間
  • 子育てや介護のための時間
  • 副業が許可されている場合は、副業にあてる時間

加えて、テレワークをすることで、通勤に伴う負担を軽減できます。従来のオフィス出社では、自宅とオフィスの往復で気力や体力を消耗してしまう人も少なくないでしょう。また、満員電車の負担で疲れてしまい、仕事のパフォーマンスに影響をきたす面もあったはずです。

一方、テレワークであれば心身ともにフレッシュな状態で仕事をスタートできます。通勤に伴うストレスを軽減できるため、仕事の生産効率アップや体調改善などの効果が期待できるでしょう。

東京都が実施した「多様な働き方に関する実態調査」によると、80~90%の企業が通勤時間の削減について「効果があった」と回答しています。また、育児中の従業員への対応に関しては、60%以上が「効果があった」との回答がありました。

テレワークを導入するべきか判断するポイントとは?

テレワークにはメリット・デメリットの両方が存在します。では、テレワークを導入するべきどうかはどのように判断すればよいのでしょうか。

端的にいえば、テレワークのメリットとデメリットを比較して、メリットのほうが上回ると判断する場合はテレワークを導入すべきです。

企業によって社内の業務内容や事情は異なるため、一概には断定できませんが、たとえば以下に当てはまる場合はテレワークの導入効果が大きいといえるでしょう。

  • 従業員の交通費や出張費、オフィスの光熱費や印刷代に多くのコストがかかっている
  • ICTツールを活用することで、オンライン化できる業務が多い
  • セキュリティソフトの導入など、セキュリティ対策にあてる予算を用意できる

また、テレワークを導入する際は、役員などの意思決定者との合意形成が必要です。会社として意思決定・決断をするうえでは、テレワークを望む従業員の声を集めることなども有効になるでしょう。

テレワークを導入するべきか判断するポイント

テレワークの導入の流れをわかりやすく説明

ここでは、テレワークを導入する際の流れを説明していきます。

(1)テレワークの導入目的を明確にする

はじめに、「なぜテレワークを導入するのか?」を明確化することが大切です。たとえば、主なテレワークの導入目的としては、業務の生産性向上や従業員の通勤時間の短縮などが考えられます。

テレワーク導入後にしっかりとテレワークのメリットを享受していくためには、会社全体としてブレない導入目的を定めることがポイントです。

(2)テレワークの導入プロセスおよび推進体制の構築

導入目的を明確にできたら、テレワークを導入するための推進体制を構築します。ここでポイントとなるのは、推進体制のリーダーに導入対象部門のトップを据えることです。部門トップが自ら推進リーダーを務めることで、スムーズな導入につながります。

そのうえで、推進体制チームで今後の導入の進め方を定義していきます。

(3)現状の業務を分析する

テレワーク導入を進めるためには、現状の社内業務を把握することが必要です。業務を把握するうえでは、以下のような観点で業務を分析するとよいでしょう。

  • 業務内容および業務に要する工数
  • 業務で扱う紙媒体の種類やボリューム
  • 個人情報の取り扱い有無
  • 社内システムやツールの整備状況
  • 業務で必要な人数やコミュニケーションの頻度

業務分析の結果、テレワークできる見込みのある業務とテレワークが困難な業務に分類していきます。

(4)具体的な制度や環境を準備する

テレワーク対象となる業務の洗い出しができたら、導入に向けた具体的な制度や環境の準備をしていきます。必要な準備事項としては、主に以下が挙げられます。

  • テレワーク対象者の決定
  • テレワーク形態の決定(在宅勤務・モバイルワーク・施設利用型勤務など)
  • 労務管理制度の見直し(業務開始・業務終了の連絡ルールなど)
  • 社内制度・ルールの整備(事前申請ルールや交通費の支給ルールなど)
  • 各種オンラインツールやセキュリティ対策ツールの準備
  • 紙資料のデータ化
  • 業務環境の整備(コワーキングスペースやシェアオフィスなどの活用検討)
  • テレワーク実施にあたっての従業員への教育・研修

上記のような準備事項について推進体制チームを中心に議論し、マニュアル化していきましょう。

(5)試験的にテレワークを実施する

テレワークを実施する際は、いきなり社内全体で本格的に実施するのではなく、まずは小規模で試行してみることが効果的です。

試験的にテレワークを実施することではじめて見えてくる課題や気づきもあります。これらの課題や気づきを活かして、本格導入に向けて検討を重ねていく進め方がよいでしょう。

(6)テレワークを本格的に導入する

試験導入での気づきを制度やルールに反映したら、いよいよ本格的にテレワークを導入していきます。

本格導入後も、定期的に従業員からアンケートを収集し、テレワークの導入目的を果たせているかを確認していくことが大切です。

より詳細なテレワークの導入プロセスについては、厚生労働省の「テレワーク総合ポータルサイト」も参考にしてみてください。

5種類に分けることができるテレワークの働き方

テレワークは、働く場所などによって主に5つの種類に分けることができます。

  • 在宅勤務
  • モバイルワーク
  • 施設利用型勤務
  • SOHO
  • 内職副業型勤務

それぞれについて解説していきます。

在宅勤務

在宅勤務は、その名のとおり自宅で働くスタイルです。新型コロナウィルス感染拡大の防止策として、多くの企業で採用されているワークスタイルとなります。テレワークのなかでも代表的な働き方といえるでしょう。

在宅勤務における仕事上のコミュニケーションは、主に電話やメール、チャットが中心となります。そのため、チャットツールやWeb会議システムなどを活用した働き方となることが一般的です。

また、業務時間中のログを記録するため、業務ログ管理システムなども必要に応じて活用されます。

在宅勤務では、生活空間である自宅で働くことになるため、仕事とプライベートをしっかりと区別することが大切です。メリハリをつけて仕事に取り組むためにも、以下のようなことを意識するとよいでしょう。

  • 仕事用の部屋とプライベート用の部屋を分ける
  • 業務時間外は業務用のパソコンやスマートフォンを原則見ないようにする
  • 在宅勤務の場合でも、業務開始までにはビジネス用の服装に着替える

他には、家族と同居している場合は、勤務中であることをしっかりと意思表示しておくことが重要です。

モバイルワーク

モバイルワークは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを使って、移動しながら働くスタイルです。主に顧客先に訪問する機会や移動する機会の多い営業職などで活用されます。

モバイルワークでは移動しながら働くことになるため、スマートフォンやタブレットなどのポータブル性の優れた端末が便利です。パソコンの場合でも、画面サイズや重量がコンパクトな製品が適しているでしょう。

モバイルワークにおける注意点は、セキュリティ対策です。電車やバスなどの公共交通機関で業務端末を使用する場合もあるため、セキュリティには十分に注意しましょう。たとえば、端末にプライバシーフィルターを貼る、画面ロックを忘れずに行うなどの対策が必要です。

施設利用型勤務

施設利用型勤務は、会社が用意した施設を利用して働くスタイルです。会社が用意する施設には、主に以下が挙げられます。

  • サテライトオフィス
  • レンタルオフィス

上記のどちらも、通常のオフィス拠点とは別に用意されたテレワーク用のオフィスやワークスペースです。

施設利用型勤務の主な目的は以下のとおりです。

  • 社員の通勤や移動の負担軽減
  • 都心部と郊外、地方など地域間の連携
  • 社員の生産性の向上

施設利用型勤務を利用することで、会社が遠方にある社員にとっては通勤時間の削減につながります。また、少人数のサテライトオフィスなどの環境で働くことで、集中力が増して生産性の向上も図れるでしょう。

さらには、都心部や郊外、地方などそれぞれの地域間の連携が深まり、社会全体としての機能性向上や経済活性化が期待できます。

SOHO

SOHOとは、「Small Office Home Office(スモールオフィス・ホームオフィス)」の略語であり、小さなオフィスや自宅などで仕事をする働き方です。主に専業性や独立性の高い仕事に従事する人を指す言葉となります。

また、SOHOと類似する言葉として、HOHO(His Office Her Office)があります。HOHOは、定年退職後の人や子育てが一段落した夫婦が、小さなオフィスや自宅で仕事をして収入を得ることです。

内職副業型勤務

内職副業型勤務は、代理が立てやすく、かつ独立性の低い仕事を対象とした自営型のテレワークです。

「内職」という言葉のとおり、SOHOよりも専業性が低く簡単な作業であることが特徴で、副業の一種として行われています。

たとえば、商品の梱包や検品など、特定の知識や専門性に依存しない作業を指します。

上記のとおりテレワークは主に5種類に分けられますが、スタイル間の優劣はありません。業務特性や仕事内容によって、働きやすい環境は異なります。

現在はインターネット環境とパソコンなどの端末があれば、場所を問わず仕事ができる時代です。それぞれの職種や仕事内容に合わせて、適切な環境整備を考えていくようにしましょう。

5種類に分けることができるテレワークの働き方

現状のテレワーク普及率はどれくらい?

近年になってテレワークの導入が顕著になってきましたが、実際どれくらいの人がテレワークをしているのでしょうか。ここでは、現状のテレワーク普及率について、「国土交通省の調査」を基に見ていきます。

テレワーカーの割合

企業などに勤めながらテレワークを実施している人(雇用型テレワーカー)の割合は、令和3年度では全体で27.0%になっています。つまり、約4人に1人がオフィスに出社せずにテレワークをしているということです。

前年度(令和2年度)が23.0%、前々年度(令和1年度)が14.8%であるため、テレワーカーの割合は直近で増加傾向にあることがわかります。特に、新型コロナウィルスが流行した令和1年度から令和2年度にかけて一気にテレワーク導入が加速したといえます。

地域別のテレワーカーの割合

地域別のテレワーカーの割合を見ると、最も割合が多いのは首都圏で42.1%です。令和3年度の地域別のテレワーカーの割合は、以下のとおりです。

  • 首都圏:42.1%
  • 近畿圏:27.3%
  • 中京圏:23.0%
  • 地方都市圏:17.7%

このことから、東京や大阪、愛知などの大都市圏においてテレワーカーの割合が高いことがわかります。

業種別のテレワーカーの割合

業種別のテレワーカーの割合を見ると、最も割合が多いのは「情報通信業」で74.0%です。情報通信業においては、全体平均の27.0%を大幅に上回るテレワーク実施率となっています。

令和3年度の業種別のテレワーカーの割合は、高い順で並べると以下のとおりです(上位3業種)。

  • 情報通信業:74.0%
  • 学術研究、専門・技術サービス業:55.4%
  • 金融・保険業:49.3%

IT業種や専門的な業種など、オンライン上で実施しやすい業種が上位にきていることがわかります。

一方、テレワーカーの割合が低い業種は以下のとおりです(下位3業種)。

  • 医療・福祉:5.7%
  • 宿泊業・飲食業:7.5%
  • 農林水産・鉱業:12.5%

医療現場や飲食店などは、対面でのコミュニケーションが不可欠となるため、やはりテレワークの実施率も低くなっていることがわかります。

職種別のテレワーカーの割合

職種別のテレワーカーの割合をみると、最も割合が多いのは「研究職」で64.1%です。

令和3年度の職種別のテレワーカーの割合は、以下の順番で高くなります(上位3職種)。

  • 研究職:64.1%
  • 営業:51.6%
  • 管理職:51.1%

上記より、個人の裁量が大きい職種やテレワークでも業務が実施しやすい職種が高くなっていることがわかります。また、営業についてはモバイルワークを実施する社員も多いため、全体的に高い割合になっているといえるでしょう。

反対に、テレワーカーの割合が低い職種は以下のとおりです(下位3職種)。

  • 保安、農林漁業、生産工程・輸送など:4.0%
  • 販売:4.7%
  • サービス(介護サービスや接客業):6.2%

農林漁業や輸送など物理的な環境で働く必要がある職種、販売やサービスなど対人接客が伴う職種は、やはりテレワークの割合が低くなっています。

勤務先企業規模別のテレワーカーの割合

勤務先の企業規模別にテレワーカーの割合を見ると、最も割合が高いのは従業員1,000人以上の企業で40.1%(令和3年度)です。

  • 従業員1,000人以上:40.1%
  • 従業員300人~999人:29.1%
  • 従業員100人~299人:24.4%
  • 従業員20人~99人:18.0%
  • 従業員1人~9人:13.9%

上記のとおり、従業員数が多くなるにつれてテレワーカーの割合も上がっていることがわかります。このことから、社内ネットワークや各種オンラインツールを整備しやすい大企業のほうがテレワークを導入しやすい傾向にあるといえるでしょう。

通勤時間別のテレワーカーの割合

職場までの通勤時間別のテレワーカーの割合では、通勤時間が長くなるほどテレワーカーの割合が高い傾向がみられます。

令和3年度の通勤時間別のテレワーカーの割合は、以下のとおりです。

  • 通勤が1時間30分以上:56.4%
  • 通勤が1時間~1時間30分未満:46.9%
  • 通勤が30分~1時間未満:32.9%
  • 通勤が30分未満:13.9%

一般的に、通勤時間が長いほど通勤の負担は増大します。そのため、通勤時間が長い人のほうがテレワークを希望する、もしくはテレワークを積極的に実施している企業を選んでいるといえます。

通勤交通手段別のテレワーカーの割合

通勤交通手段別のテレワーカーの割合をみると、最もテレワーク実施率が高いのは「鉄道・バス通勤者」です。

令和3年度の通勤交通手段別のテレワーカーの割合は、以下のとおりです。

  • 鉄道・バス:47.3%
  • 自転車・徒歩:17.1%
  • 自動車・二輪車:14.3%

新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、人が密集しやすい鉄道やバスの通勤者のほうがテレワークに切り替えていることがわかります。一方で自転車や徒歩、自動車、二輪車での通勤者の場合は、比較的感染リスクが低いことから、従来通りの通勤者が大多数となっています。

テレワークに関連する助成金はあるのか?

テレワークに関しては、国や自治体から助成金が用意されています。テレワークを導入する際は相応のコストがかかるため、これらの助成金を積極的に活用していくとよいでしょう。ここでは、代表的な助成金を紹介します。

テレワークに関連する助成金

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

厚生労働省が提供しているテレワークの助成金です。テレワークを新規導入する中小企業向けに、通信機器の購入や就業規則の変更などにかかった費用の一部を最大200万円まで助成しています。

参考:
人材確保等支援助成金(テレワークコース)

IT導入補助金

経済産業省が提供しているテレワークの助成金です。IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者向けに、ITツールの導入費用の一部を助成しています。

参考:
IT導入補助金

上記の他にも、東京都などの各自治体が実施するテレワーク助成金もあります。テレワークに関連する助成金の詳細については、一般社団法人日本テレワーク協会「テレワークに関する助成、補助」も参考にしてみてください。

まとめ

テレワークは、業務の生産性向上やコスト削減、事業継続性の向上など、さまざまなメリットのある魅力的な制度です。新型コロナウィルスの感染拡大などを背景に、社会全体としてテレワークの実施率は大幅に上昇しています。

一方で、テレワークには業務面、セキュリティ面、導入コスト面、運用面などにおいて課題も存在します。これらの課題を解決するためには、各種オンラインツールの活用や十分なセキュリティ対策、社内制度の見直しなどが肝心です。

もしテレワーク導入に課題があるときは、住友電工情報システムへ一度ご相談ください。弊社ではテレワーク導入時の問題を解決できる「MCore」や「楽々Webデータベース」、テレワークを効率化する「楽々WorkflowII」「楽々Document Plus」「QuickSolution」など、さまざまなITソリューションを提供しています。

「社内の情報を管理しつつセキュリティを強化したい」
「書類や契約締結の電子化が必要」
「社内での資料やファイルの共有をもっとスムーズにしたい」

上記の悩みを持つ担当者は、下記のページにて各製品の詳細をご覧ください。
https://www.sei-info.co.jp/solution/telework.html

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