ユウキ食品株式会社
複数の業務システムを自社開発
目次
楽々Frameworkを導入し、複数の業務システムを自社開発
IBM System i(AS400)で開発した大規模システムを刷新し、
社内への開発ノウハウの蓄積も実現
中華・エスニック調味料やドレッシング等を専門とする食品メーカー「ユウキ食品株式会社」(以下、ユウキ食品)では、住友電工情報システムのWebアプリケーション開発基盤「楽々FrameworkII」を導入し、自社の仕入システムやグループ企業の販売システムをリプレイス。不具合の多かった旧システムを刷新した。さらに、その後には、「楽々Framework3」による大規模システムの自社開発を実施。老朽化が進んでいた旧システムのリプレイスを実現したほか、社内にもシステム開発のノウハウやJava等の知見を蓄積することができた。
IBM System i(AS400)で開発した業務システムのリプレイスを検討
1974年8月に設立されたユウキ食品は、中華・エスニック調味料やドレッシング等の食品の製造・販売・輸入事業を展開する企業。日本人の味覚に合わせて開発した「四川豆板醤」は、長年に渡って、日本の食卓で愛されている人気商品だ。また、2006年に米マコーミック社から製造・販売の権利を取得した「フレンチドレッシング」も、四川豆板醤に並んで、高い人気を誇っている。
同社は、買掛金を管理する仕入システムや、グループ企業の販売システムを、「IBM System iのDB2 400」上で開発し、運用していた。しかし、データ連携等を行なっている生産管理システムがリプレイスされることをきっかけに、自社開発による両システムの刷新に乗り出すこととなった。
同社は、複数の開発基盤を比較検討し、楽々FrameworkIIの導入を決定する。選定の理由について、開発を主導したシステム企画室課長の西澤寛之氏は「まず、楽々FrameworkIIは、IBM System iへの接続が可能だったこと。さらに、住友電工情報システムのプレゼンを受けて、他社製品よりも手軽に開発ができると確信できたことが選定の理由です。私自身、メインフレーム系の開発経験は豊富なものの、PCサーバ系のシステム開発の経験は一度もなかったため、開発の手軽さは非常に重要視していました」と話す。
楽々FrameworkIIの選定は満場一致による決定だったと、西澤氏は振り返る。西澤氏は、住友電工情報システムによる研修プログラムを経て、まず、グループ企業の販売システムから開発に取り掛かった。
小規模システム開発から手掛け、Javaの知見を蓄積
最初にグループ会社の販売システムを手掛けた理由として、西澤氏は「画面数が14本と開発ボリュームが少なく、最初の開発に適当だと思った」と語る。楽々FrameworkIIではプラグインにJavaを用いるが、西澤氏はJavaのプログラム未経験。そのため、比較的簡単な開発から始め、徐々にJavaへの習熟度を高めていくのが狙いだった。
開発のなかでは、やはりJavaのプログラミングに最も手を焼いたが、そうした際に役立ったのが、住友電工情報システムによる技術サポートだった。
西澤氏は開発当時を振り返り、「サポートサイトの『Support Site for RakRak』には助けられました。過去にあった問い合わせのQ&Aが検索できる『逆引き辞書』は非常に便利でしたし、質問を送れば翌日には必ず回答をいただけました。また、サポートからの回答も丁寧で、Java未経験である私の質問にも、粘り強くご対応いただけました」と評価する。
こうした各種サポートの後押しを受けて、2012年3月に販売システムは本番稼働に至った。開発工数は、楽々FrameworkIIの開発が約2人月、それ以外のバッチ処理等の開発が約1人月だった。特に、マスタメンテナンス画面の開発は比較的容易で、工数の削減に大きく貢献した。
続いて、西澤氏は、ユウキ食品の仕入システムの開発に取り掛かったが、この頃にはJavaへの習熟度も高まり、開発の生産性も次第に高まっていったという。
「開発開始から2ヶ月ほど経ったある日、突然、Javaのソースが読めるようになったのは驚きでした。しばらくすると、プログラミングもできるようになり、それからは正に“楽々”に開発が進みました」(西澤氏)
仕入システムの開発は、楽々FrameworkIIの開発に約6人月、それ以外の開発に約8人月という工数で完了。2013年11月から本格稼働に至った。従来の仕入システムは、某システムベンダーが開発したものだったが、特定の帳票をプリントする際には30分ほど時間を要するほか、システム改修後には不具合が発生することも多く、数々の問題を抱えていた。対して、楽々FrameworkIIで開発した仕入システムでは、そうした問題は払拭され、現在も安定稼働している。
COBOLやRPG等で開発された大規模システムのリプレイスに成功
二つのシステムの開発を経て、自社開発のノウハウを蓄積したユウキ食品。同社は、そうした知見を生かして、さらに大規模なシステム開発に挑んだ。
それが自社の販売システムの開発だった。同社が利用していた旧システムは、開発から20年ほどが経過し、老朽化が進んでいた。しかし、楽々FrameworkIIで開発した二つのシステムよりも一段と規模が大きく、開発工数も膨大と見積もられたため、手が付けられない状況が続いていたという。
そうしたなかで、2019年10月からの消費税率引き上げ、それに伴う軽減税率の導入が決定する。旧システムでは複数税率への対応は不可能であり、システムのリプレイスが迫られたことから、同社は楽々Framework3による新システムの開発に踏み切った。
自社開発に挑んだ理由を「これまでに比べて、開発ボリュームははるかに多く、パッケージシステムの導入も検討しました。しかし、これまで自社開発した二つのシステムは安定稼働を続けていましたし、旧販売システムの仕様もある程度は社内で把握していました。さらに、その頃には楽々FrameworkIIの後継である楽々Framework3がリリースされており、IIよりも多彩な機能を備えていたことから、外部パートナーの力を多少借りれば、自社でも開発は可能なのではないかと考えるに至りました」と西澤氏は語る。
ユウキ食品は、住友電工情報システムからの紹介を受け、楽々Frameworkを熟知しているパートナー会社のエンジニア1名を外注し、受注系入力画面の開発を委託。それ以外の開発については、自社内で行うこととした。
当初、開発は長期化が見込まれたが、楽々FrameworkIIではJavaプラグインが必要だった一部の設定が、楽々Framework3では画面設定で可能になるなど、製品の進化が工数削減を後押しした。さらに、マスタメンテナンス画面の単体テストは、社内のユーザーに担当させることで開発期間の短縮を図った。
「楽々FrameworkIIでの開発経験から、自動生成される画面の精度が高いことは分かっていました。そのため、開発側で念入りにテストすることは避け、社内にマスタメンテ係を組成して、細かいテストを依頼しました。稼働後には自ら利用するシステムなので、マスタメンテ係は真剣に取り組んでくれましたし、実際に不具合の指摘は少なかったです。開発側の工数削減にもなるので、楽々Framework3であれば、こうした開発手法も有効だと思います」(西澤氏)
2019年6月、楽々Framework3で開発された販売システムが本番稼働。楽々Framework3の開発の工数は約7人月、それ以外の開発は約30人月であり、当初の想定よりも少ない工数で開発を完了した。特に、外部パートナーのエンジニアはスキルが高く、当初、3人月を想定していた開発を1人月で完了させた。また、外部パートナーから得られたメリットは、工数の削減だけではなかったと西澤氏は話す。
「外部パートナーからは、JavaやSQL、楽々Framework3の開発テクニックなどを学ばせてもらいました。特に、開発を委託した受注入力画面と、そのJavaプラグインにはベンダーの高い技術が凝縮されており、他の画面を作成する際によく参考にしています。当社の資産といっても過言ではありません」(西澤氏)
旧システムはCOBOLやRPGで開発されていたため、技術継承的な側面からもシステムリプレイスの必要性を感じていたという西澤氏。今回の開発では、楽々Framework3等の開発ツールでシステムの全てを作り上げたため、こうした課題も解決することができ、満足していると語る。
課題は楽々Framework3のスキルを持った人材育成
開発体制を強化し、物流システムも自社開発へ
ユウキ食品の情報システムにおける今後の課題として、西澤氏は人材育成を挙げる。
「ごく最近まで、楽々Framework3の開発ができるのは、社内に私だけという状況が続いていました。私が突然不在になってしまった場合を考えれば、これは企業として大きなリスクです。しかし、近頃、20代の若手社員がシステム企画部に配属となり、私と共に楽々Framework3の開発を担当するようになりました。現在は、画面の開発や修正を若手社員に担当させています。多少の難しさは感じているようですが、簡単な画面を自力で作成できるようになるなど、日に日に成長を続けています」(西澤氏)
現在、ユウキ食品は、稼働から10年が経過した物流システムのリプレイスを計画中。その物流システムの開発にも、楽々Framework3の適用を検討しているという。西澤氏は「最近では開発人員も増えていますし、物流システムは以前に開発した販売システムよりも開発ボリュームが少ないので、楽々Framework3による自社開発も可能だと考えています」と、今後への意気込みを語った。
システム企画部 課長
西澤 寛之 氏