福岡県信用保証協会
月間10万枚以上の申込関係書類を削減
目次
QRコード機能などを活用し、
月間10万枚以上の申込関係書類を削減
申込関係書類の受領から保管までを
デジタル上で完結可能な体制を確立
福岡県内の中小企業向けに事業資金の貸付時の「公的な保証人」の役割を担う福岡県信用保証協会は、月間10万枚にものぼる膨大な申込関係書類を電子化し、業務の効率化やデジタル化を進めるため、楽々Document Plusを導入。QRコード読取オプションや独自開発の文書登録ツールなどを活用して導入を推進し、申込関係書類の受領から保管、閲覧までをデジタル上で完結できる体制を構築した。
また、既存システムで実施していた内部文書の管理も統合し、ペーパーレス化に向けた業務体制を確立している。
コロナ禍で申込みが殺到。
申込関係書類の処理や保管が多大な手間に。
福岡市博多区に本所を置く福岡県信用保証協会は、県内の中小企業向けに事業資金貸付時の「公的な保証人」を担う認可法人。中小企業が金融機関から事業資金を借り入れる際に、信用調査・審査などを通じて、中小企業の信用保証などを行う。1949(昭和24)年の設立以来、福岡県内の中小企業のベストパートナーとして、事業計画や資金繰りを支えてきた。現在、顧客は約71,000社以上。福岡県内の中小企業の50%以上を顧客としており、地域経済の土台を支える存在だ。
2020年からのコロナ禍では、その役割の重要性がよりいっそう際立った。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、国は事業資金を実質無利子・無担保で融資する「ゼロゼロ融資」をはじめ、中小企業の経営を支える各種制度を策定。これを受けて、福岡県信用保証協会は金融機関と連携し、経営に支障が生じている数多くの中小企業の経営安定に尽力した。しかし、殺到する顧客からの申込みは同協会の負担を増大する要因にもなっていた。特に、負担になっていたのが申込み時に顧客が作成する紙の申込関係書類だ。紙の申込関係書類にまつわる課題について、総務企画部次長兼情報システム課長の堺信貴氏は振り返る。
「お客様が当協会に申込みをする際には、決算書などを添付した申込関係書類をまず金融機関に提出し、その後金融機関経由で書類が共有されます。この申込み1件につき50枚ほどになるものもあり、申込内容によっては店舗の賃貸契約書や設備投資機器の見積書など、さらに多くの書類が添付されることもあります。こうした書類は月間10万枚以上にのぼり、それらをすべて紙で受領して、処理や保管をするのは非常に手間です。特に、コロナ禍において申込みが殺到した際には、処理が追いつかず、各拠点の保管庫が溢れてしまうほどでした。申込関係書類のペーパーレス化はコロナ禍以前から検討はしていたのですが、いよいよ不可避な状況を迎えていたと思います」(堺氏)
ちょうどそのころ転機が訪れる。上部団体である「(一般社団法人)全国信用保証協会連合会」により、信用保証の申込みを電子化する電子受付システムが開発されたのだ。同協会は、このシステムの導入を決定。加えて、このシステムで申込みされた電子文書である申込関係書類を管理するための文書管理システムを導入することで、受領から保管までをデジタル上で完結できる体制を構築することを計画した。
QRコード機能や独自ツールを活用し、
業務効率化も推進
新たな文書管理システムを導入するにあたって、福岡県信用保証協会は複数の選定要件を設定した。その一つが「PDFファイルなどを含めた全文検索機能を有していること」。申込み内容の審査時などには、保証協会の内部文書を参照する機会が多いため、該当する文書をスピーディーかつ容易に検索できる機能を求めた。さらに、「幅広いファイル形式に対応していること」も重要な要件だった。当時、同協会は、社内の通達などを管理する文書管理システムを限定的に運用していた。そのため、新たなシステムの導入後にはデータ移行を予定していたが、既存システムはメーカー独自のファイル形式を採用していたことから、拡張子を変更せずに文書を移行できる機能が必要だった。
こうした要件のもとで、楽々Document Plusが選定される。楽々Document Plusは、高速かつ高性能の全文検索機能を備えており、ビューワでの文書の閲覧も可能。そのため、内部文書の参照作業の大幅な効率化が期待できた。さらに、WordやExcel、PowerPointなどの一般的なものに加え、幅広い文書形式をPDFに変換して表示できる。既存システムが採用するファイル形式もそこに含まれていたことから、同協会は導入を決めた。
2023年7月、堺氏が課長を務める情報システム課を中心に導入プロジェクトが開始された。この際、福岡県信用保証協会は「QRコード読取オプション」を活用。システムの導入後も、顧客が紙の申込関係書類を提出した場合には、QRコード読取オプションを利用して効率的に保管できる体制を目指した。具体的には、紙の申込関係書類をスキャンする際にQRコードを発行し、それを読み込むだけで文書が保管される仕組みを構築した。
さらに、導入にあたっては業務効率化をより推進するため、独自ツールも開発している。その内容について、総務企画部情報システム課の神川功太郎氏は解説する。
「デジタルで受領した申込関係書類のデータをスムーズに楽々Document Plusに保管するため、Excelで文書登録ツールを開発しました。このツールに申込関係書類のデータを添付して登録するだけで自動的に楽々Document Plusに文書が保管されるほか、本所の事務部門に共有されます。これにより、申込関係書類を登録する際の手間が大幅に削減され、事務部門の業務も効率化されました」(神川氏)。
こうした各種の工夫を重ね、福岡県信用保証協会は楽々Document Plusの導入を推進。2024年3月に運用開始に至った。
受領~閲覧をデジタルで完結。
2年後には約17万件の登録を見込む。
現在、福岡県信用保証協会では、申込関係書類の受領から保管、閲覧までをデジタル上で完結できる体制が構築されている。具体的には、金融機関から既述の電子受付システムを経由して受領した申込関係書類を文書登録ツールで楽々Document Plusに保管。閲覧時には全文検索機能を活用し、該当文書を閲覧している。現在、運用開始から間もないことや、紙の申込関係書類による申込みが継続していることからペーパーレス化の効果は限定的だが、2年後に約170,000件の文書登録を見込んでいるという。これにより予想されるペーパーレス化と業務効率化の効果は多大だ。さらに、業務効率化については、すでに効果が顕在化しつつあると神川氏は説明する。
「金融機関から申込みや相談を受ける都度書庫に取りに行き、膨大な顧客ファイルの中から目的の書類を探していました。今後、電子化が進めば書庫へ取りに行く必要がなくなり、かなりの効率化が期待できます。また、通達文書等の検索についても、過去の5,000件以上の文書から楽々Document Plusでスピーディーに検索・閲覧できます。特に、全文検索機能は便利で、文書のタイトルや日付を覚えていなくても部分的なフレーズだけで該当文書を検索できます。実際に、私自身も文書を探す手間がかなり減っていると感じています」(神川氏)。
将来の危機に備えて、
今のうちから業務のデジタル化を
今後、福岡県信用保証協会は、電子受付システムの利用範囲をさらに拡大し、文書管理のデジタル化を加速させる方針だ。その先に見据えているのは、デジタル上で業務を一貫できる体制だ。今後の展望について堺氏は語る。
「コロナ禍に申込みが殺到したことで当協会の業務量は大幅に増加。そのため、2020年から2022年ごろにかけては職員が総出で顧客対応にあたっていました。しかし、以前は紙の申込関係書類が中心だったことから、業務に従事できる場所や時間には制限がありました。例えば、私も支所の応援に出向くことが多かったのですが、その度に私が勤務する本所から数十km離れた支所に移動しなければいけませんでした。これは効率性の観点でも大きなロスですし、何より私自身の身体的な負担になっていました。今後、コロナ禍のような事態がいつ発生するかわかりませんし、そのときに備えるためにも業務のデジタル化は進めておく必要があると思います。その意味では、今回の楽々Document Plusの導入は業務のデジタル化を加速させる良いきっかけになりました」(堺氏)。
長年の懸案事項であったペーパーレス化を推進し、次世代に向けた業務体制を確立した福岡県信用保証協会。その取り組みは、アナログな業務体制からの脱却を目指す多くの組織の模範になることだろう。
次長 兼 情報システム課長
堺 信貴 氏
情報システム課
神川 功太郎 氏