オンプレミスとは?メリット・デメリット、クラウドとの違いを解説します
ビジネスシーンでも導入が進むクラウド(クラウドコンピューティングサービス)に対し、サーバやソフトウェアなどを自社で保有・設置・運用する、従来型のオンプレミスがあります。
オンプレミスは旧型の古い運用形態だと思われがちですが、カスタマイズ性やセキュリティレベルなどの点で、クラウドよりも優れたメリットを発揮することも珍しくありません。
当記事ではオンプレミスの概要やクラウドとの違い、導入のメリット・デメリット、クラウドとの各種プロセス・機能の比較などを解説します。
オンプレミスとは?
オンプレミス(on-premises)とは、ソフトウェアやハードウェア、サーバなどの情報システムを、自社が設置・管理する運用形態のことです。情報システムの自社開発・運用も含まれます。
いわゆるクラウドサービスが登場する前の、従来実施されてきた運用形態です。クラウドが登場してから、クラウドと区別する意味でオンプレミスという言葉が使われるようになりました。
オンプレミスの例は次のとおりです。
- 自社でメールサーバやチャットツールなどを構築・運用する
- システムのアップデート・変更やメンテナンスを自社の人材でまかなう
- セキュリティの構築やチェック、緊急のトラブル対応も自社内で完結させる
情報システム関連のインフラ・機器などを自社で持たず、インターネットを通じてサービスを利用するクラウドとは、対になる関係と言えるでしょう。
オンプレミスの利用状況
オンプレミスの利用状況は、爆発的に普及するクラウドと比べて以前より減少傾向が見られます。
総務省の「令和3年度通信利用動向調査」のアンケート結果によると、クラウドを「全社的に利用している」は42.6%、「一部の事業所または部門で利用している」は27.6%と回答しています。合計で70.2%と、7割以上の企業がクラウドを利用していると結果が出ました。
産業別だと、利用している企業の割合が情報通信業で92.2%、金融・保険業で89.1%、不動産業で84.3%と、対面営業やデスクワークが多い産業の数値がとくに高くなっています。
アンケート結果における、企業で利用しているクラウドサービス内容は主に次のとおりです。
- ファイル保管・データ共有
- 電子メール
- 社内情報共有・ポータル
- スケジュール共有
- 給与・財務会計・人事
- データバックアップ
クラウドを使う理由として。「場所や機器を選ばず利用できる」「自社で体制を整える必要性がない」などが挙げられていました。
また、総務省の「令和3年版情報通信白書」によると、クラウドを導入した企業の32.5%が「非常に効果があった」、54.6%が「ある程度効果があった」と、87.1%が導入効果を実感しています。
しかし一方で、運用コストやセキュリティ問題の点で、クラウドからオンプレミスへ回帰しようとする動きも出ています。事業形態や財務状況によっては、クラウドよりオンプレミスのほうが運用しやすい企業があるのも事実です。
現在では、オンプレミスとクラウドの両方を活用するハイブリッドクラウドという運用方法が注目されています。
オンプレミスのメリット・デメリット
オンプレミスには以下のメリット・デメリットがあります。
メリット
オンプレミスのメリットは、システムの構築や運用、メンテナンスなどを一貫して自社で対応できる点でしょう。クラウドと異なり、ある意味決まった枠組みや制約がないので、自社の業務フローや設備、人材に応じたレベルのITインフラや情報システムが構築できます。
具体的なメリットは次のとおりです。
- 既存の自社システムや業務フローと連携がしやすい
- 自社の要件に合わせて、ネットワーク環境やセキュリティレベルを構築できる
- カスタマイズやメンテナンスを、事業者の都合に左右されず自社の都合に合わせて実施できる
企業の情報システムに関するノウハウ・ナレッジ・人材レベルによっては、非常に高レベルの運用が可能です。
デメリット
オンプレミスのデメリットもまた、情報システムに関することを一貫して自社で対応しなければならない点になります。導入から運用までを自社のみで完結しなければならず、労力・金銭的なコストがかかります。
具体的なデメリットは次のとおりです。
- システムの運用開始までの初期コストや時間がかかる
- 情報システムの機能やカスタマイズによっては、さらなる費用や時間が必要になる
- システム・機器のカスタマイズ、アップデート、メンテナンス、トラブル対応などをすべて自社リソースで対応する必要がある
- 情報システムに強い専門的人材がいないと、導入・運用・管理の難易度が非常に高くなる
資金や人材に制限がある中小企業だと、さまざまな面での導入・運用コストが重くのしかかります。
オンプレミスとクラウドの比較
対の存在となるオンプレミスとクラウドは、それぞれにメリット・デメリットがあります。どちらを導入すべきかは、両者の特徴を比較してから検討するのが望ましいです。
ここからは、オンプレミスとクラウドを比較したときの両者の特徴を解説します。
オンプレミス | クラウド | |
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費用面 |
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セキュリティ面 |
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自由度・カスタマイズ度 |
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導入面 |
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運用面 |
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クラウドとは
クラウドとは、オンプレミスとは反対に自社でソフトウェア・ハードウェアやその他のITインフラなどを設置せず、インターネット経由でクラウド事業者のサービスを利用する運用形態です。
仮想サーバ、アプリケーション、機器などはすべてクラウド事業者側が提供します。また、システムのアップデートやメンテナンス、トラブル対応なども、原則としてクラウド事業者側に任せることが可能です。
2000年代から急激に広まった運用形態であり、総務省をはじめとする官公庁も普及の促進を支援しています。
費用面
オンプレミスは、導入のための初期費用が非常に高い傾向にあります。サーバやハードウェア、ソフトウェアなどの開発・構築や購入を、一から始める必要があるからです。数百万円~数千万円かかることも珍しくありません。
強固なセキュリティや通信回線、独自の複雑なシステムを求めるほど、必要なコストも増加するでしょう。
しかし、クラウドのようなサービスの月額料金は原則として発生しないので、一度導入し安定して運用できれば、ランニングコストは抑えられる可能性があります。
一方でクラウドは、すでに事業者側が既存の情報システムを用意しています。一から開発などをする必要がないので、かかる初期費用は既存システムとの連携や、その他にかかる設定費用のみです。数十万円程度で導入できる場合もあります。
ただしクラウドサービスと契約している限り、サービス利用料が継続的にかかります。オンプレミスとクラウドのどちらが安いかは、長期的な目線で考える必要があるでしょう。
セキュリティ面
オンプレミスのセキュリティは、他のシステムや機器と同じく一から構築できるため、自社環境に適応したものを導入できます。セキュリティレベルも、構築やコスト次第でどこまでも高めることが可能です。
またオンプレミスは、他の企業とハードウェアや回線などを共有する可能性が原則としてありません。機密性の高い情報を扱ったり、常に高速回線での利用を求めたりといったニーズがある場合は、オンプレミスがよいでしょう。
ただし、アップデートや障害発生時の対応は、すべて自社リソースで解決する必要があります。
一方でクラウドのセキュリティシステムやレベルは、クラウド事業者側に依存します。とはいえ、実績あるサービスや大手企業などにおいて、問題あるレベルでのセキュリティで運用していることはほぼありません。
近年では、総務省が事業者向けに「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン」を制定していたり、ISMSやCSマーク(クラウド情報セキュリティ監査制度)の認定があったりなど、利用者が安心して使える環境が整いつつあります。
ただし、クラウドサービスは他の企業と共通で使うことも多い上に、事業者側のシステムへ自社情報を残すことになります(プライベートクラウドは除く)。メンテナンスや障害発生時の対応も事業者側に依存するので、迅速かつ臨機応変が必要なときには注意が必要です。
自由度・カスタマイズ度
すべてを一から構築・運用するオンプレミスは、非常に自由度・カスタマイズ度が高い運用形態です。システムの拡張・変更、既存システムとの連携、その他カスタマイズなどを、自社判断で自由に行なえます。
ただし導入時と同じく構築や設定作業が発生するので、情報システムに強い人材や費用、時間などが必要になります。
一方でクラウドはオンプレミスには多少劣るものの、契約変更によるシステムの拡張や機能追加などを自由にカスタマイズ可能です。また、カスタマイズ作業は事業者側にすべて任せることができます。
導入面
オンプレミスは、導入・運用開始までに非常に時間がかかります。
導入・運用までにはシステムの企画、要件定義、サーバ構築、ハードウェア・ソフトウェアの開発および購入、導入作業、導入後のテストといった一連のプロセスを踏まなければなりません。長いときは、数か月以上の時間がかかる可能性があります。
クラウドの場合は、すでに構築・テストされた環境を利用するので、比較的短期間での導入が可能です。導入後の運用テストに問題がなければ、すぐに利用開始できます。
運用面
オンプレミスの大きな特徴は、環境や機能まですべてを自社独自のものを揃えられる点です。導入するOS・システム・アプリケーション・セキュリティなどの規模や種類も、既存環境との連携や社内ルール、人員、スキルに応じた自由に導入・構築ができます。
また、メンテナンスや保守、アップデート作業も事業者側の都合に合わせる必要がなく、自社のタイミングで行えるのもメリットです。ただし、対応難度の高いトラブルも自社で対応する必要がある上に、作業にかかる人的・時間的リソースもすべて自社負担になります。
一方でクラウドは、環境・機能ともにほとんどが事業者側提供のサービスに左右されます。とはいえ、近年のクラウドは利用者のニーズに応える多様な容量・機能の拡張・縮小に対応しているケースが多く、よほどの独自性が求められる場合以外は、クラウドで十分に運用できるはずです。
メンテナンスや保守作業、アップデート作業は、原則として事業者側がスケジュール通りにすべて対応してくれます。また、仮に災害などで自社のハードウェアやソフトウェアが破損しても、クラウド側にバックアップデータが残せるのがクラウドならではの特徴と言えるでしょう。
ただし、こちらが意図しないタイミングでのメンテナンス作業発生や、事業者側のミスによるサービス利用の一時停止などが発生する可能性があります。急ぎの作業の際に、サービスが使えないというトラブルが考えられます。
自社にあったオンプレミスとクラウド利用の選択方法
自社がオンプレミスかクラウドのどちらを利用すべきか決める際は、導入前に次の点を検討してみてください。
- 自社がシステムの導入で解決したい課題の内容や規模はどれくらいか
- 初期費用にいくら予算が出ているか
- 情報システムに強い人材のリソースはどうか
- どのくらいのセキュリティレベルを求めているか
- 開発や導入に十分な時間やコストをかけられるのか
既存のシステムを独自開発している、特殊な運用・管理が必要になる、機密性の高い情報を取り扱う、情報システムに強い人材やチームがあるといった場合は、オンプレミスのほうが適している可能性があります。
コストパフォーマンスを重視する、ビジネス状況に応じて利用料金や使用機能を変更したい、迅速にシステムを導入したい、管理・運用に割ける人材が少ないといった場合は、クラウドの利用の検討がおすすめです。
運用管理が適切にできるのであれば、「社外秘の情報取り扱いや管理システムはオンプレミス」「情報共有や業務データの保存はクラウド」といったように、オンプレミスとクラウドを併用してハイブリッドクラウドで運用するのもひとつの手でしょう。
まとめ
オンプレミスは、自社で構築・導入・運用をすべてまかなう従来の情報システムの運用形態です。普及度や利便性の観点からクラウドが注目されていますが、オンプレミスにはクラウドにはないメリットも存在します。
オンプレミスとクラウドのどちらを活用すべきかは、自社リソースやノウハウ・ナレッジ、業務形態などをしっかりと分析してからの検討がおすすめです。
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