株式会社長野県協同電算

株式会社長野県協同電算

SAPの会計システムを
楽々Framework3で刷新

SAPの会計システムを楽々Framework3で刷新
老朽化した開発基盤からも脱却し、自社のDXを加速させた

JA長野県グループの電算センター機能を担う株式会社長野県協同電算(以下、長野県協同電算)では、SAPの会計システムを長年利用していたが、メンテナンス要員の異動や退職等により、精通者がいなくなった。そのような状況の中、開発基盤のオープン化や シェアの高い開発言語へのシフト、環境の変化に追随という目的でローコード開発基盤 楽々Framework3(以下、楽々FW3)を導入。会計システムを内製で更改したほか、既存の老朽化した開発基盤からのシステムの載せ替えも進めている。これにより、同社内では開発作業の標準化や、Javaによる開発の普及が進み、若手技術者の育成や確保が容易になるなど、複数の導入効果が生まれている。

会計システムの更改時期を目前に、
技術者の高齢化や要員の確保・育成が課題に
ローコード開発ツールの導入を通じて、
新たな開発体制の構築を狙った

1974 年に設立された長野県協同電算は、JA長野県グループの情報システムを担う企業。JA長野県グループに属する4つの連合会、14のJAの基幹システム、及びJAバンク・JA共済の業務システム、その他販売、購買、営農指導、人事、財務、会計までに至る、幅広いITシステムの開発や保守運用を手がけている。

同社は2017年にローコード開発基盤 楽々FW3を導入し、SAPの会計システムを内製で更改したほか、既存の開発基盤で運用していた複数のシステムの載せ替えにも成功している。同社の開発部開発一課課長である中澤吉栄氏は、楽々FW3を導入した経緯について説明する。

「2005年ごろから利用していたSAPの会計システムの更改時期が迫っていたことが、導入のきっかけです。当社では、JAの全国組織が主導するSAPの会計システムを利用していたのですが、このシステムに精通した技術者は社内からすでにいなくなっており、更改が困難な状況でした。このため、SAPの会計システムを提供している県下のJAからの更改に伴う機能改善要望にも対応できないおそれがありました。以前から、当社ではAS400などの旧来型のプログラム言語や老朽化した開発基盤を刷新し、技術者の確保や若手の育成を進めたいと考えており、そのためにも開発しやすく、保守性の高いローコード開発ツールの導入が必要でした」(中澤氏)。

こうしたなかで、長野県協同電算は、ある開発依頼を受ける。それは、顧客である県下のJAからのワークフローシステムの開発依頼だった。当初、同社はパッケージ製品のワークフローシステムを単体で導入する計画を立てたが、それでは導入による効果はペーパーレス化に留まってしまう。業務効率化という本来の目的を果たすためには、ワークフローシステムと基幹システムとの連携が必要であり、さらに、そのためにはワークフローシステムと親和性の高い開発ツールを利用する必要があった。これを契機に同社は新たな開発ツールの導入に向けて動き出すこととなった。

開発工数の削減や品質管理などの観点から楽々FW3を選定
業務標準化や若手技術者の育成に注力し、DXに向けた体制強化を図る

開発基盤の導入にあたり、長野県協同電算は5つの開発言語・ツールを選定し、「開発生産性」「品質管理」「サポート」「費用」などの観点で比較検討を実施した。その結果、楽々FW3の導入が決まる。多数の部品を組み立てる形でシステム開発を進める楽々FW3は、検証作業などの開発工数の削減がのぞめたほか、開発作業の標準化も期待できた。また、ファンクションキーやエンターキーなどのマウスレスで操作性の良い画面を作成できる点も評価のポイントだった。

さらに、選定の決め手になったのが楽々WorkflowIIとの連携だ。楽々WorkflowIIは、楽々FW3の姉妹製品にあたるワークフローシステム。ブラウザのみで画面設定ができ、ノーコードでの申請画面作成や承認経路設定なども可能なため、簡単かつスピーディに導入できるという特長を持つ。また、姉妹製品のため楽々FW3との親和性も高く、両者を活用すれば基幹システムとの連携も比較的容易に実現できると考えた。これは、導入のきっかけであった開発依頼に対応するうえで心強い機能だった。

楽々FW3を選定した長野県協同電算は、SAPの会計システムの更改などに向け、本格的な導入に移った。その際に注力したこととして中澤氏は「社内への教育研修」を挙げる。

「当初から開発作業の標準化を通し若手技術者の育成を目指していたため、導入初期における教育研修には特に力を入れました。ベンダーである住友電工情報システムが提供するオンサイトでの研修は計6日受講させていますし、週一日を計14回の技術支援契約も締結しています。これらは新たな開発体制の構築のためには必要な取り組みだったと思います」(中澤氏)。

社内で作成した研修資料。このほか、研修動画や模擬プロジェクトを作成するなどして、教育研修の内製化を進めた。

また、同社は教育研修の内製化も推進している。研修用のドキュメントを整備したほか、オンライン会議ツールを利用した研修動画も作成。さらに、研修用の模擬プロジェクトも構築し、楽々FW3の未経験者でも開発作業に習熟できる体制を整えた。こうした取り組みを通じて、会計システムの更改や既存の開発基盤からのシステムの載せ替えが推進されていく。

導入から約5年間でSAPの会計システム含む10種類のシステムを開発
Javaによる開発体制を構築し、安定的なシステム運用が可能に

導入から約5年が経過した現在、長野県協同電算は楽々FW3で開発した10種類のシステムを運用している。会計システムはもちろん、顧客から開発依頼を受けたワークフローシステム、経営管理システム、書庫管理システム、種菌システムなど、開発したシステムは大小さまざまだ。中澤氏は、こうした取り組みを通じて、新たな開発体制が構築されたと語る。

「楽々FW3により、SAPの会計システムの内製での更改が可能になり、顧客からの機能改善要望にも対応ができるようになりました。また、老朽化した開発基盤からのシステムの載せ替えも進んでおり、今後も管理共通システムや名寄せシステムなどの5システムを移行する予定です。楽々FW3はローコードによるスピーディな開発が可能ですし、開発作業も標準化しやすいため、十分対応できる見込みです」(中澤氏)。

さらに、中澤氏は、社内の開発言語のシフトも進んでいると話した。従来、同社では開発基盤の関係上、C#.NETによる開発が中心であったが、楽々FW3の導入以降はJavaでの開発が主流になった。これにより、若手技術者への教育や維持管理の引き継ぎが容易になり、各種システムの安定的な運用が可能になっている。

こうして楽々FW3によりDXを推進した長野県協同電算は、これを契機に新たな取り組みにも乗り出している。それが他県へのシステム提供だ。同社は楽々FW3で開発した会計システムを自社運用し、その有用性を確認したことから、同システムの他社提供を決定。他県のJA系統電算センター向けにオリジナルパッケージとして提供を開始する方針だ。楽々FW3による開発基盤の刷新は、現在、同社の新たな収益確保にも貢献しようとしている。

約5年間の利用を通じて、楽々FW3の「開発生産性の高さ」を実感
既存業務の効率化は、新規事業へのリソース確保のためにも必要不可欠

最後に、中澤氏に楽々FW3の評価ポイントについて聞くと「開発生産性の高さです」と答えた。

「例えば、楽々FW3は基幹系システムの基本的な取引パターンが部品として備わっています。具体的には、単票形式や一覧形式の登録・照会・更新・削除。そのほか、明細行を増やす際の行追加や、ページ送りするためのページャーなども備わっています。そのため、比較的簡単に基幹システムの画面を構成することができますし、ヘッダーなども設定しやすいです。また、簡単なマスターメンテナンス画面などであれば、開発ツール『RakStudio』を使ってノーコードで開発することができますし、開発生産性の高さは他の製品に比べても極めて優れていると思います」(中澤氏)。

「RacStudio」の開発画面。簡易的な画面であれば、ノーコードで開発可能。Javaによる補助的なコーディングも不要。

現在、長野県協同電算は施設内に新たなデータセンターを建設中だ。同所ではJA長野県グループのデータ管理を行うとともに、ハウジング・ホスティングサービスも提供する予定だという。こうした新規事業を効果的に展開し、自社の収益向上を図るためには、既存業務の効率化によるリソースの確保が必要不可欠。ローコード開発プラットフォームである楽々FW3による開発作業の標準化は、同社のDX推進を促すとともに、新たな取り組みを足元から支える役割も果たしている。

中澤 吉栄 氏
株式会社長野県協同電算
開発部 開発一課 課長
中澤 吉栄 氏

株式会社長野県協同電算のホームページ

※本事例中に記載の社名や肩書き、数値、固有名詞等は取材時点の情報です。

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