本セミナーは名古屋に当社営業拠点を開設してまもなく1年を迎えるのを機に、中部地区の製造業のお客様にご参考にしていただける情報をと、住友電気工業株式会社(以下、住友電工)におけるシステム開発の事例ご紹介をメインテーマに企画したもので、同社情報システム部の奈良橋三郎氏、中村伸裕氏が講演を行った。
当社名古屋営業課課長の中村浩二が司会を務め、奈良橋氏からは住友電工のIT戦略と今後の具体的計画について、中村伸裕氏からはシステム開発における生産性向上、品質向上への具体的な取り組み内容とツールについて紹介があり、最後に当社マーケティング室長の森永聡よりそれらのツールをベースにした製品をご紹介した。
グローバルITビジョン実現のための、ベンダーに依存しないIT推進体制
住友電工 情報システム部次長 奈良橋三郎氏
「ITは住友電工にとっての基盤技術であり、生産技術と並んでコスト競争力の源泉であるため、決してシステム開発を外部に丸投げすることはしない」との基本方針がまず説明された。そして事業部門別に基幹業務一貫システムを構築する方針を1980年に決定し、常に最新のITを活用しながら、「自社技術で自社開発、自社運用」してきた経緯について説明があり、昨年実施された日経コンピュータの「IT力調査」で総合4位にランクされたことも紹介された。
住友電工 情報システム部でのアーキテクチャーの推移
続いて住友電工の新中期経営計画“12Vision”について、情報システム部門としては経営情報のリアルタイム把握実現に向けて、(1)グローバルSCMの構築、(2)情報通信インフラの拡充・整備、(3)人材育成、の3点に取り組むとの説明があった。
グローバルSCMシステムのイメージ
特にグローバルSCMシステムについては、開発費、開発期間を削減して構築を加速させるため、これまで推進してきた部品再利用をさらに徹底させて、システム仕様からコードまでの広範囲な再利用を進めるアプローチが進行中であると説明された。
ものづくりの手法を実践し、強いシステム部門をつくる
住友電工 情報システム部 システム技術グループ長 中村伸裕氏
品質管理の父といわれるデミング博士の考え方を引用しながら、ソフトウエア開発においても欠陥の流出を防ぎ、コストを抑制するためには自工程品質保証が重要である、とし、その上で、ソフトウエア開発を工業化するために、住友電工で実践している3つの技術を解説した。
- (1)要件定義技術
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1994年以降、佐藤正美氏が提唱するT字形ER手法を導入することでデータベース設計の属人性を排除し、さらに要件定義のあいまいさや内部矛盾を排除。
- (2)再利用技術
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Javaフレームワーク(「楽々FrameworkII」として製品化)を自社開発し、2003年以降、部品組立型開発を徹底させて、開発量の大幅削減を実現。実質的なコーディングの標準化も実現した。Javaフレームワークについては、データ項目の部品化、業務画面の部品化など、その特徴的な機能も具体的に説明された。
- (3)品質制御技術
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管理図などを活用して、システム開発における品質の管理精度を上げることで品質向上を実現。
特に品質制御技術については、正規分布、3σ法による工程能力判定、管理図など、統計的品質管理についての一般的な解説のあと、住友電工での具体的適用事例として、例えば開発規模を単純にJavaステートメント数で表現するのではなく、Javaフレームワークでの部品定義パラメタ数を組み合わせた「JaX」値を独自に定義して管理図に適用することで管理精度が向上し、品質がコントロールできるようになったとの報告があった。
さらにプログラムの複雑さを抑制するため、McCabe複雑度やメソッド行数の上限値を設定していること、欠陥数を予測することでテスト作業品質を確認していること、欠陥フロー図によりプロジェクト全体の品質を管理していることなど、実際の管理図を示しながら説明がなされた。
そしてこれらの管理情報を一元管理するためにisdocやIS Portalなどの情報管理/共有ツールを自社開発して見える化し、成果物の構成管理などシステム開発全般に適用していることが説明され、住友電工の高度な品質管理を印象付けた。
導入企業は拡大中! ものづくり企業が開発したITツール
最後のセッションでは、上記の講演内容をふまえ、住友電工情報システムが開発・販売しているソフトウエア3製品を当社マーケティング室長の森永より紹介。
まず、企業のシステム開発部門による自社開発を全面的に支援するツールとして住友電工のJavaフレームワークを製品化した「楽々FrameworkII」を紹介。先日リリースしたVer.5.0の新画面、新機能も披露した。次に、住友電工の全社承認基盤として800業務で使用されているワークフローシステム「楽々WorkflowII」を紹介した。.NETなどで開発された既存のシステムにも連携可能である点や、多国語対応など、お客様に評価をいただいている特長を説明した。最後に純国産の検索エンジン「QuickSolution」を紹介した。ものづくり企業であるハカリのイシダ様の事例は、製造業における社内文書ファイルの検索・活用事例として紹介し、参加者にも好評であった。